女神アフディーの初恋

崖の上の手、少女の喜び

 お腹を満たした二人は、さらに森の深淵へと足を進めました。
 目の前に立ちはだかったのは、自分たちの背丈よりも高い、切り立った土の崖。

「この丘の向こうには、今まで誰も行ったことがないんだ。きっと不思議な鳥はこの向こうにいるよ」

 アロンは力強く言いましたが、剥き出しの土は脆く、一人ではどうしても足を滑らせてしまいます。
 少し考えると、アフディー様に、生意気にも指示をしました。

「アフディー。俺の肩に足をかけ、あの木の枝に捕まるんだ。登ったら上から手を伸ばしてくれないか」

 アロンが肩車をするとアフディー様は心配する声をかけます。

「……重くはない、アロン?」

「ヘッチャラさ。俺は男の子だぜ」

 泥だらけの少年の肩を信じ、アフディー様は枝へと手を伸ばしました。
 崖の上へ這い上がったると、下のアロンへと真っ直ぐに手を差し伸べます。

「さあ。アロン」「うん。アフディー」

 差し伸べられた手を、握り返されたその顔には、もはや女神の威厳も傲慢さもありません。
 ただ、大切な仲間と共にいたいと願う、一人の等身大の少女の喜びが溢れていました。

 二人は互いの手を強く握りしめ、泥にまみれながら、ついに崖を登りきったのです。

「情熱的な青い鳥」は珍しく、そんな二人から背を向けると、微笑む顔を隠すように帽子の目深に下げました。
 うるさいほどの賛辞はやみ、そこにはただ、優しく美しい沈黙だけが流れていました。
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