百年前と百年後を生きる君へ
「ありがとう。気持ちだけ受け取っておくね」


悲しそうな顔で私を見てくる佳代ちゃんに、にこっと笑顔で返しながら本を持って教室を出る。


女学校の裏庭は人が全く来ない穴場スポットで、昼休みになるとここのベンチで本を読むことが私の日課となっていた。

校舎の裏には様々な花が咲いている花壇が並んでいて、その向こうには古い塀が続いている。

塀の向こうが、電車の彼が通う学校だ。

ここは静かで大好きな本を読むのに最適な場所だから好きっていうのもあるけど、それ以外にもこの場所が好きな理由があった。


「いい匂い…」


色とりどりのパンジーが咲き誇る花壇に、そっとしゃがみ込んで顔を近づける。

季節ごとに変わる花壇の花を見ることが好き。春になれば、均等に植えられている木々も桜の花を咲かせる。

ここは綺麗な自然を感じることができる場所だから、外の世界が好きな私にとって唯一自由な時間を感じられる場所。

厳しい父のいる家庭で育ってきたから、外出は学校に行く時と母の買い物を手伝う時のみ許されていた。

本当は私だって、好きな時に好きな場所に行きたい。

でもそんなことは夢物語だとわかっているから、この場所にいる時だけは自分が自由になれている気になれるのだ。


そろそろ本を読もうと立ち上がり、花壇の近くに一つだけあるベンチに腰掛ける。

電車で読み進めていた部分を開いたところで、いきなり強い風が吹き本の間に挟んでいた栞を攫って行った。
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