死なないで
「私もね、ひとつだけ秘密があるんだよ」

「何?」

要が優しく笑った。

「私ね。要とカフェ出会う前よりも前に会ったことがあるんだよ」

これは、別に未来のことを言っているわけではない。

「まだ高校生だった時、私、入学式の日に駅で迷子になったんだ。私ね高校に上がると同時に、今住んでる町に来たから。その時にね、助けてくれたのが、要だったんだよ」

要は驚いたような顔をしていた。

きっと覚えていないのだろう。

私は忘れたことなんて1度もないけどね。

「それからね、色んな人脈使って、要が通ってる高校を突き止めたんだ。でも、全寮制って聞いて、もう要、電車使わないじゃんって思って、それでも会いたくて。要がどこの大学に行くのか、聞いて、わざわざ同じ大学を受けたんだ。ストーカーみたいだよね?引いた?」

「引かないよ。それだけ思われて幸せだよ」

要は私を真っ直ぐに見つめて言った。

「要に初めて会った時、一目惚れしたって言ったでしょ。私はね、別に要の見た目に一目惚れした訳じゃないんだ。あっ、もちろん見た目も好きだよ」

私は立ち上がった。そのまま、海を見つめた。

「私は要の優しさに一目惚れしたの。本気で誰かのことを考えてる要の優しさに恋をしたんだよ。要はすごく優しい人だよ」

要の手を引いて、立ち上がらせた。

そのまま、海へ引っ張っていって、一緒に海へ飛び込んだ。

水分を帯びた服がピッタリと体にはり付いた。

要は急にびしょ濡れにされ、驚いた顔をしていた。

「さすがに、冬の海は冷たいね」

私は笑って言った。

そして、手で水をすくい、要にかけた。

「ちょっと、紗夜」

要は笑っていた。

そして要も私に水をかけてきた。

「やったなー!」

そのまましばらく水をかけあった。

散々水をかけあって、さすがに寒くなって、また砂浜に座った。

「寒すぎ」

要はそう言って私の手を握った。

「要の手冷たすぎ」

「紗夜の手も冷たいよ」

顔を合わせて笑った。

そして、立ち上がった。

「海汰くーん!絶対見つけるよー!」

海に向かって叫んだ。

海汰くん。もし会えたら、もう要から離れていかないでね。

要の優しさで守ってもらったみたいに、海汰くんも要を守ってね。

「ほら、要も」

要も立ち上がった。

「海汰に会いたいー!」

「会いたいー!」

並んで、声の限り叫んだ。
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