死なないで
全身に要の体温が伝わってくる。

要の手が私の体をしっかりと抱きしめた。

「紗夜。ごめんね。ごめんね」

要は謝るだけだ。何も話してはくれない。

「何があったか言ってよ」

要の腕に抱きしめられたまま言った。

今度は要の心臓の音がはっきりと聞こえた。

「ごめん」

要の腕を振りほどいた。

「ごめんじゃわかんないよ!」

また声を荒らげてしまった。

今度は要は悲しそうに笑っていた。

「笑うなっ!ばか!」

要を思いっきり叩き、私を止めようと要に掴まれた腕を振り払って、外に出た。

「紗夜!」

とにかく走った。

どこに行きたかったのかなんて分からないとにかく走り続けた。

ずっと走って走れなくなって立ち止まった。

息が苦しい。

死んでしまいそうだった。

いや、いっそ、このまま死んでしまいたかった。

あんなこと知りたくなかった。

知らないままでいたかった。

泣いて泣いて泣いた。

地面にうずくまって泣き続けた。

周りにいた人が何事かと見つめてきたが気にせず泣き続けた。

どれだけ泣いたら涙は出なくなるのだろうか。

どれだけ泣いたら悲しくなくなるのだろうか。

涙は透明な血らしい。

だったらずっと泣けば全身の血がなくなって、ミイラみたいにからからになって、死んでしまうのだろうか。

それでもいいと思った。
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