死なないで
何も言わない要に手を引かれながら歩いた。

賑やかな人々の声が飛び交う温かい街だった。

1つの家の前で要が立ち止まった。

所々崩れていて、庭の草木は伸び放題だった。

「要?」

その家をじっと見つめている要に声をかけた。

「入ろ。」

要は家の門を開け、ずかずかと中へ入っていった。

「ちょっと、勝手に入っていいの?」

私は慌てて要を止めた。

「大丈夫だよ。ここ、僕の家だから。僕と海汰が暮らしてた家。」

「要の家。」

それを聞いてゆっくりと門をくぐった。

要はここで育ったのだろうか。

一体、どんな人生を歩んでできたのだろう。

「僕の家って言ってもね、12歳までしか住んでないんだ。僕が12で海汰が8歳の時、僕らは施設に行ったから。」

要はそう言いながら家の裏へ回って行った。

私も要の後をおった。

家の裏には、沢山の花が咲いていた。

「この花ね、僕と海汰で植えたんだよ。」

要はしゃがんでそっと花に触れた。

私もその横にしゃがんだ。

「もう、海汰を探すのはやめよう。全部話すから。これからは普通に二人で暮らそうよ。」

要が私を真っ直ぐに見つめた。

そして、話始めようとした。

私は、急いで要の口を塞いだ。

自分でも何故か分からない。

でも、ここで聞いちゃいけない気がした。
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