忘れないまま恋をした
公園のベンチ。
冬の空気が冷たい。

吐く息が白く広がる。

直哉は、いつもの距離で座っていた。
近すぎず、遠すぎず。

その距離が、今はやけに苦しい。

「寒くない?」

「大丈夫」

嘘だった。
体じゃなくて、心が震えていた。

少し沈黙が続く。

直哉は、何も急かさない。

それが余計に、言葉を引きずり出す。

「今日ね」

声が掠れた。

「直哉が、女の子と話してるの見た」

直哉が少し驚いた顔をする。

「ゼミの子?」

「知らない」

どうでもいいはずなのに。

なのに胸が痛い。

言葉が止まらない。

「なんか…」

喉が詰まる。

「嫌だった」

自分でも驚くほど、素直な声だった。
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