忘れないまま恋をした
私はまた、あの家の前に立っていた。

「いらっしゃい」

玄関を開けた直哉のお母さんが言う。

前より、少しだけ近い笑顔。

「柚ちゃん」

その呼び方に、

胸が少しだけ温かくなる。

テーブルにご飯が並ぶ。

世間話。

仕事のこと。

住んでいる場所のこと。

普通の会話。

なのに、

私はどこか落ち着かない。

手のひらが少し汗ばむ。
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