営業部の穂積先輩は今日も不機嫌で困る
「でも、穂積くんって落ちたあと自分で登ってくる人は嫌いじゃないのよね」
蝦名さんは少し目を伏せて、独り言みたいに呟いた。
どう返事をしていいのかわからずに黙っていると、彼女は机の上の資料にちらりと視線を落とした。
「……その資料の広げ方は、怒られるかもね」
「え……?」
「必要なものがすぐ取れないって、よく言うでしょ? 穂積くん」
「あ……気をつけます」
恥ずかしくなり、机の上の資料を慌ててまとめた。
「あら、ごめんなさい。別に片付けなくてもいいんだけど」
「いえ……ありがとう、ございます」
蝦名さんは微笑みを崩さず、あっさりと踵を返した。
その背中を見送りながら、あのいつも不機嫌そうな人にも信頼し合う誰かがいると思うと、不思議な気分だった。
気を逸らすように、もう一度資料を広げ直した。
今度は必要なものがちゃんと取りやすいように、意識しながら。
……穂積先輩が誰と親しくても、わたしには関係ない。それに今は、そんなこと考えてる場合じゃない。
ページをめくる指先に、少しだけ力を込めた。
◇
「今日の日報出ました。ドライブを確認してください」
定時になる少し前、凜がフロア全体に周知した途端、全員がタブレットを確認し始めた。
企画部にいた頃は知らなかった。営業がここまで、毎日数字に追われ続ける仕事だなんて。
タブレットを開くと、営業部全員の売上と達成率がランキング形式で並んでいた。
わたしにはまだ予算は付いていない。けれどロープレに受かれば、来月からは自分の名前もここに並ぶ。
そう思うと緊張で、心臓がきゅっと縮んだ。
蝦名さんは少し目を伏せて、独り言みたいに呟いた。
どう返事をしていいのかわからずに黙っていると、彼女は机の上の資料にちらりと視線を落とした。
「……その資料の広げ方は、怒られるかもね」
「え……?」
「必要なものがすぐ取れないって、よく言うでしょ? 穂積くん」
「あ……気をつけます」
恥ずかしくなり、机の上の資料を慌ててまとめた。
「あら、ごめんなさい。別に片付けなくてもいいんだけど」
「いえ……ありがとう、ございます」
蝦名さんは微笑みを崩さず、あっさりと踵を返した。
その背中を見送りながら、あのいつも不機嫌そうな人にも信頼し合う誰かがいると思うと、不思議な気分だった。
気を逸らすように、もう一度資料を広げ直した。
今度は必要なものがちゃんと取りやすいように、意識しながら。
……穂積先輩が誰と親しくても、わたしには関係ない。それに今は、そんなこと考えてる場合じゃない。
ページをめくる指先に、少しだけ力を込めた。
◇
「今日の日報出ました。ドライブを確認してください」
定時になる少し前、凜がフロア全体に周知した途端、全員がタブレットを確認し始めた。
企画部にいた頃は知らなかった。営業がここまで、毎日数字に追われ続ける仕事だなんて。
タブレットを開くと、営業部全員の売上と達成率がランキング形式で並んでいた。
わたしにはまだ予算は付いていない。けれどロープレに受かれば、来月からは自分の名前もここに並ぶ。
そう思うと緊張で、心臓がきゅっと縮んだ。