営業部の穂積先輩は今日も不機嫌で困る
……あ、穂積先輩。また数字が伸びてる……。
月初には上位にいなかったはずなのに、気づけば一番上に名前があった。
……やっぱりすごい人なんだな。隣で見ていてもわかるのに、数字になるともっと容赦がない。
そのとき、日報を眺めながらふと視線が止まった。
蝦名梓。ランキングの五位に、その名前がある。やっぱり仕事ができる人なのだと納得した。
……やっぱり、穂積先輩の周りには、結果を出す人が集まるんだ。
そんなことをぼんやり考えていると、急に声を掛けられた。
「どうしたの? 鮎川さん。眉間に皺寄せて」
「え? あ、安藤さん。お疲れ様です」
外回りから戻った安藤さんが、不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「何か問題でもあった?」
「いえ。日報を見てて……皆さんの売上、すごいなあって」
「ああ。皆さんっていうか、穂積先輩でしょ」
「安藤さんもランキング、載ってましたよ。おめでとうございます」
「うん。今週はでかいコンペを勝ち抜いたからね。……でもなかなかトップ5にはいけないんだよなあ」
安藤さんもタブレットを開き、呻くように言った。
「うわあ。蝦名さん、先週よりすごい伸ばしてる。さすがだな」
その名前にドキリとして顔を上げると、隣の席で凜が意味深に笑った。
「……さっき美月、声を掛けられてたよね。蝦名さんに。何の話だった?」
「何の話って……頑張ってるわね、とか」
「穂積さんの話、されてなかった?」
「えっと……」
「ああ。なるほど」
わたしが言い淀むと、含み笑いで安藤さんが頷いた。
「穂積先輩に手を出すなって牽制されたとか?」
「いえっ。そんなことは言われてないです! 仲が良さそうだなって思っただけで」
「うん。仲は良いかもね。あの人、穂積先輩と大学の同期らしいし」
「あれ、付き合ってるんじゃないんですか? ちょっと疑ってました」
凜が横から口を挟んだ。
「うーん、それはないんじゃない? 穂積先輩は社内恋愛は絶対しないって公言してるし」
「……そうなんですか?」
「仕事の邪魔になるものを、職場に持ち込みたくないんだって。昔、そう言ってた」
「へえ……」
意外なような気もしたけれど、あの合理性の塊のような人なら、そんな発言も不思議じゃなかった。
月初には上位にいなかったはずなのに、気づけば一番上に名前があった。
……やっぱりすごい人なんだな。隣で見ていてもわかるのに、数字になるともっと容赦がない。
そのとき、日報を眺めながらふと視線が止まった。
蝦名梓。ランキングの五位に、その名前がある。やっぱり仕事ができる人なのだと納得した。
……やっぱり、穂積先輩の周りには、結果を出す人が集まるんだ。
そんなことをぼんやり考えていると、急に声を掛けられた。
「どうしたの? 鮎川さん。眉間に皺寄せて」
「え? あ、安藤さん。お疲れ様です」
外回りから戻った安藤さんが、不思議そうな顔でこちらを見ていた。
「何か問題でもあった?」
「いえ。日報を見てて……皆さんの売上、すごいなあって」
「ああ。皆さんっていうか、穂積先輩でしょ」
「安藤さんもランキング、載ってましたよ。おめでとうございます」
「うん。今週はでかいコンペを勝ち抜いたからね。……でもなかなかトップ5にはいけないんだよなあ」
安藤さんもタブレットを開き、呻くように言った。
「うわあ。蝦名さん、先週よりすごい伸ばしてる。さすがだな」
その名前にドキリとして顔を上げると、隣の席で凜が意味深に笑った。
「……さっき美月、声を掛けられてたよね。蝦名さんに。何の話だった?」
「何の話って……頑張ってるわね、とか」
「穂積さんの話、されてなかった?」
「えっと……」
「ああ。なるほど」
わたしが言い淀むと、含み笑いで安藤さんが頷いた。
「穂積先輩に手を出すなって牽制されたとか?」
「いえっ。そんなことは言われてないです! 仲が良さそうだなって思っただけで」
「うん。仲は良いかもね。あの人、穂積先輩と大学の同期らしいし」
「あれ、付き合ってるんじゃないんですか? ちょっと疑ってました」
凜が横から口を挟んだ。
「うーん、それはないんじゃない? 穂積先輩は社内恋愛は絶対しないって公言してるし」
「……そうなんですか?」
「仕事の邪魔になるものを、職場に持ち込みたくないんだって。昔、そう言ってた」
「へえ……」
意外なような気もしたけれど、あの合理性の塊のような人なら、そんな発言も不思議じゃなかった。