営業部の穂積先輩は今日も不機嫌で困る
翌日の打ち合わせスペースでは、微妙な緊張が漂っていた。
テーブルの向こうにはクライアントの担当者が二人。その前に第二営業部の蝦名さんが座っている。落ち着いた表情で資料をめくる姿に、無駄な動きは一切ない。
「では、今回の店頭施策について、それぞれ案を聞かせてください」
促されて、軽く息を整える。
「はい。今回の商品ですが、リピーター確保を前提に、初購入で最初の実感を作る必要があると考えます。
ですから、店頭にミニ体験スペースを設けて、実際に商品を試していただく体験導線を作ります。
なんとなく良さそう、ではなく、確かに違うを、その場で感じていただく形です」
「体験を軸にする形ですね」
担当者の一人が納得したように頷いた。
けれど、すかさず隣から、落ち着いた声が入った。
「コンセプトは理解できますが、一点、気になるところがあります」
蝦名さんはそう言いながらわたしの提案書を閉じて、まっすぐこちらを見る。
「その施策、立ち止まる人を前提にしてますよね」
言葉が、一瞬で場の空気を引き締める。
「……はい。まず興味を引いて、足を止めてもらう導線を──」
「ドラッグストアで、わざわざ足を止めて体験する人って、どれくらいいると思います?」
否定ではない。けれど、逃げ場を塞ぐような問い方だった。
「……商品に興味を持っていただければ……」
「興味を持った人が、さらに一手間かけて試す、ですよね」
「……そうです」
「それって、かなりハードル高いと思いますよ」
言い方は穏やかだが、内容は容赦がない。
「この商品、単価もそこそこありますよね。だったらなおさら、その場で買う理由を先に作った方がいいと思います」
そこで初めて、蝦名さんが自分の提案書を開いた。
テーブルの向こうにはクライアントの担当者が二人。その前に第二営業部の蝦名さんが座っている。落ち着いた表情で資料をめくる姿に、無駄な動きは一切ない。
「では、今回の店頭施策について、それぞれ案を聞かせてください」
促されて、軽く息を整える。
「はい。今回の商品ですが、リピーター確保を前提に、初購入で最初の実感を作る必要があると考えます。
ですから、店頭にミニ体験スペースを設けて、実際に商品を試していただく体験導線を作ります。
なんとなく良さそう、ではなく、確かに違うを、その場で感じていただく形です」
「体験を軸にする形ですね」
担当者の一人が納得したように頷いた。
けれど、すかさず隣から、落ち着いた声が入った。
「コンセプトは理解できますが、一点、気になるところがあります」
蝦名さんはそう言いながらわたしの提案書を閉じて、まっすぐこちらを見る。
「その施策、立ち止まる人を前提にしてますよね」
言葉が、一瞬で場の空気を引き締める。
「……はい。まず興味を引いて、足を止めてもらう導線を──」
「ドラッグストアで、わざわざ足を止めて体験する人って、どれくらいいると思います?」
否定ではない。けれど、逃げ場を塞ぐような問い方だった。
「……商品に興味を持っていただければ……」
「興味を持った人が、さらに一手間かけて試す、ですよね」
「……そうです」
「それって、かなりハードル高いと思いますよ」
言い方は穏やかだが、内容は容赦がない。
「この商品、単価もそこそこありますよね。だったらなおさら、その場で買う理由を先に作った方がいいと思います」
そこで初めて、蝦名さんが自分の提案書を開いた。