冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
黄金色の瞳は酷く怯えており恐る恐るといった調子だった。
様子を窺うような視線が周囲に向けられ、それがヒストリアにも届く。

「どういうことだ?」

ルーメンが眉を顰めるとユリアンは不安そうに問う。

「……嫌いにならない?」

保険をかけるように訊ねる言葉に、ヒストリアはユリアンが何か抱えているのだと悟った。

「大丈夫だから教えて」

顔を向け視線を合わせては手を握る。

それで不安の色が消えることはなかったが、しかしユリアンはヒストリアの手を握り返して言った。

「国王は毒で殺されたの……私……ロイドの命令で毒殺した人を殺してる…」

それは、国王に毒を盛らせた女を口封じのため殺害したという告白だった。
ユリアンはドラゴンに転身し、国王と女の遺体を夜の闇に紛れ人しれぬ山間へ捨ててきた記憶があるらしい。

そして女の方はロイドが発行した王宮通行証を持っていたという。
それは今も尚、遺棄した死体と共にあるはずだと言う。

強烈な出来事は洗脳されていても抵抗を示す理性が記憶していたようだ。

「だからあのときユリアンを殺すことが最優先事項だったのね……」

ユリアンの告白を聞き、ヒストリアは呟いた。
ヒストリア達を襲った男の一人は、最後にユリアンを殺すため致命傷を負わせてから撤退していた。幸い助かったが、その意味が今になって判明したのだ。

「よくぞ告白してくれた」

ラキュウス辺境伯は黙ってユリアンの話を聞き終えると言った。

「怖かったでしょう……」

ユリアンを抱きしめ、ヒストリアはロイドに激しい怒りを覚えた。

魔法使いを、人を、なんだと思っているのだろう。
意思を奪って服従させるなどロイドは越えてはならない一線を既に越えてしまっている。

「であれば後は神殿とロイドの繋がりか……」

ラキュウス辺境伯はオリハルト公爵からの書簡を睨みながら言った。
神殿はロイドが危なくなれば容易く切り捨てるに違いない。

幻覚の魔法使いを捕縛できなくとも、王族と同等の力を持つ神殿を逃がしてはならない。

「神殿についてはそれぞれの罪を糾弾すべきでしょう」

ルーメンが言った。
しかしその言葉の意味がヒストリアには直ぐには分からなかった。

「それぞれの罪って…?」

問えば静かな視線と交わる。

「王家と神殿の罪だ。ロイドとの繋がりは実質証明は不可能だろうからな」

そしてルーメンはラキュウス辺境伯に訴えた。

「ここは聖女の廃棄に関してベルナルド王太子殿下に告発させるべきです」

その発言にラキュウス辺境伯と騎士表情は強張る。

彼らは聖力を失った聖女の末路について真実を知りながらも国内の混乱と権威の失落を避けるため黙秘していた。

浄化石による結界構築の運用が実現すれば真実を明るみにするため動くと言っていたが、このような形で真相を糾弾するのは不本意だろう。

ラキュウス辺境伯は、ルーメンの意図を察したようだが慎重に問う。

「……国内で分断が生まれる前に罪を認めろということか」

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