冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
ヒストリアはラキュウス辺境伯に進言した。

「ディート地区ならばベリルという者がいます。彼は土地勘があり地区のまとめ役でもあります。仲間には元神殿騎士や神殿の動向に詳しい者もいるので、彼らに協力を依頼すべきです」

言いながらヒストリアは迷いを飲み込んでいた。

これ以上、彼らを巻き込んではいけない。
きっとエリザベートが知ればあの時のように怒るかもしれない。
だが、盤石なものにするため持てる手段は持つべき。

成功率を上げるなら助けを求めることが正しいと考えたからだ。

「浄化石の入手に関わった者達か……私の兵だけでは制圧出来ないと?」

「いいえ。しかし神殿もラキュウス辺境伯の動向に目を光らせているのではないでしょうか?反発や警戒はもちろん、以前よりも守りが固くなっている可能性もあります。土地勘と神殿内部に詳しい人間が居る方がより効率的だと言いたいのです」

言えばラキュウス辺境伯が問う。

「……浄化石を守っていると聞くが、彼らがそこまで動く確証はあるのか?」

確かに、彼らが身を捨ててまで自分たちを助ける義理はないかもしれない。
誰かが失敗しても成立しない断罪劇なのだ。

彼らは様々な理由でディート地区に流れ着いた。

生きることが最優先であり、破滅の道もあるかもしれない国の中枢で巻き起こる陰謀に関わるのは、得策ではない。

けれど以前スレイは言っていた。
軽い調子で告げていたが、皆の背景にはそれぞれの譲れない信念のようなものがある気がした。

「ベリルの本質は“守るべきもの”には義理堅い人。彼らも皆、そうです。神殿の腐敗を知っているからこそ、現状を知れば見過ごせないはずです」

その進言をルーメンは静かに見守っていた。
無言の眼差しに背を押されるようにヒストリアは安堵し、はっきりと告げる。

「彼らは必ず、ラキュウス辺境伯の力となります!」

やがて暫くの沈黙のあとラキュウス辺境伯は短く頷いた。

「――分かった。すぐに使者を出そう」


そして、糾弾に向けての歯車は動き始めた。


この判断がのちに王都を揺るがす切り札になることを、今はまだ誰も知らない。
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