冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
――――閉塞感のようなものを感じる分厚い曇り空が一層夜を深くする頃、ラキュウスは神殿の正門前にいた。
丘陵にそびえる神殿は王宮にも使用されている白い石造りで、暗闇に紛れて最上階を視認することは出来ないが中央には高い鐘楼が立っている。
ラキュウスは一発目の閃光弾を空へ撃ち、声を張り上げた。
「ディート地区の神官長に告ぐ。貴様を汚職の疑いで連行する」
静寂を割って突然現れた兵士らに神殿の灯りが次々に灯り内部のざわめきが空気を伝う。
しかし、神殿内部で騎士らが慌ただしく準備をしているであろう一方で、ディート地区の神官長は姿を現した。
それも自ら門を開けて。
神官長は前回ヒストリアを連行しようとした男と同じ人物、だが後方に控える騎士の方は以前と違って手練れの雰囲気を感じさせる。
しかし神官長が余裕で姿を見せたのは、騎士の一新もあるが、他に理由があった。
「このような夜更けに、さすがに王弟殿下と言えど無礼ではありませんか?ここは神殿です。この門より先は、ご存じの通り神殿の領域。領主の采配で取り締まれる場所ではありませんが。この場での押し問答でもご所望ですかね」
その口ぶりは反吐が出るほどにねっとりとした、弱者が威を借る様そのものだった。
神官長はラキュウスがさすがに神殿内部まで強引に進行するつもりがないとみているのだろう。
神殿は国に属するが同等の発言権を持つ特殊な存在だ。それを弁えない貴族はこの国にいない。
前回のようにれ筋を通していれば追い払うことは容易いが、正攻法で神殿の中を改めるとなると当然無理がある。
加えてラキュウスは今まで不正献金の疑いなども研究の横槍を入れさせないためにあえて見逃していた。
「そもそも証拠はあるのでしょうな?難癖付けられても困りますよ。この件は大司教様に報告しなくては」
自分の陣地に居れば安全だと安易に考えているのだろう。神官長は豪語すると鼻で笑い、相手にするつもりはないとばかりに立ち去ろうとする。
「大司教は貴様ごと一新すべきだったな」
言えば神官長はその足を止め振り返った。
ラキュウスの目的は強引な突入ではない。
彼らの注意を引きつけ別動隊を先行して侵入させることにある。
「貴様は神官長に相応しくない。いや……神殿自体、この国に相応しくない。国の脅威となり得る貴様らは即刻解体すべきだろうな」
「今なんと?」
「もはや神殿はシルドバーニュに不要な存在だと言った」
「聖女を管理し、守護している我々が不要だと?」
怒りを露わにした神官長は薄い白のローブを震わせラキュウスに向かって指をさした。
「ついに気が狂ったか、ラキュウス辺境伯。いやちがう、噂通りだ!!神殿を侮辱するなど変人め!王弟と言えど所詮は辺境伯という立場を忘れたか?あんたは研究だけに没頭していればよいものをっ」
挑発しやすい男、といった印象だったがやはりその感覚に間違いないらしい。
唾を飛ばす勢いで捲し立てる神官長は両手を広げると宣言した。
「聖騎士らよ、大司教様のお達しだ。ラキュウス辺境伯は神殿の教義に歯向かう反逆者。殺してよい!」
声を高らかに告げる神官長の言葉に騎士らが声を挙げたが、すぐ後方に控えていた騎士はおそるおそるといった様子で問う。
「……神官長、それは敷地内に侵入してきた場合の対処では……」
どうやらまともな人材もいるらしい。しかし、神官長がその騎士の言葉に耳を傾けるわけがなく。
「判断は私に任されている、よいと言ったらよいのだ!おい、あの男はどうした!?」
「先ほどまで近くにいたと思うのですが……」
誰かを探す彼らのやり取りを前に、ラキュウスは馬上で静かに剣を抜いた。
今頃、レナードとベリル達が内部を改めているに違いない。
レナードには本体とは別に数名の兵を連れさせている。
そしてスレイと名乗る男の誘導で神殿に繋がる地下通路を通って中に侵入している手筈だ。
丘陵にそびえる神殿は王宮にも使用されている白い石造りで、暗闇に紛れて最上階を視認することは出来ないが中央には高い鐘楼が立っている。
ラキュウスは一発目の閃光弾を空へ撃ち、声を張り上げた。
「ディート地区の神官長に告ぐ。貴様を汚職の疑いで連行する」
静寂を割って突然現れた兵士らに神殿の灯りが次々に灯り内部のざわめきが空気を伝う。
しかし、神殿内部で騎士らが慌ただしく準備をしているであろう一方で、ディート地区の神官長は姿を現した。
それも自ら門を開けて。
神官長は前回ヒストリアを連行しようとした男と同じ人物、だが後方に控える騎士の方は以前と違って手練れの雰囲気を感じさせる。
しかし神官長が余裕で姿を見せたのは、騎士の一新もあるが、他に理由があった。
「このような夜更けに、さすがに王弟殿下と言えど無礼ではありませんか?ここは神殿です。この門より先は、ご存じの通り神殿の領域。領主の采配で取り締まれる場所ではありませんが。この場での押し問答でもご所望ですかね」
その口ぶりは反吐が出るほどにねっとりとした、弱者が威を借る様そのものだった。
神官長はラキュウスがさすがに神殿内部まで強引に進行するつもりがないとみているのだろう。
神殿は国に属するが同等の発言権を持つ特殊な存在だ。それを弁えない貴族はこの国にいない。
前回のようにれ筋を通していれば追い払うことは容易いが、正攻法で神殿の中を改めるとなると当然無理がある。
加えてラキュウスは今まで不正献金の疑いなども研究の横槍を入れさせないためにあえて見逃していた。
「そもそも証拠はあるのでしょうな?難癖付けられても困りますよ。この件は大司教様に報告しなくては」
自分の陣地に居れば安全だと安易に考えているのだろう。神官長は豪語すると鼻で笑い、相手にするつもりはないとばかりに立ち去ろうとする。
「大司教は貴様ごと一新すべきだったな」
言えば神官長はその足を止め振り返った。
ラキュウスの目的は強引な突入ではない。
彼らの注意を引きつけ別動隊を先行して侵入させることにある。
「貴様は神官長に相応しくない。いや……神殿自体、この国に相応しくない。国の脅威となり得る貴様らは即刻解体すべきだろうな」
「今なんと?」
「もはや神殿はシルドバーニュに不要な存在だと言った」
「聖女を管理し、守護している我々が不要だと?」
怒りを露わにした神官長は薄い白のローブを震わせラキュウスに向かって指をさした。
「ついに気が狂ったか、ラキュウス辺境伯。いやちがう、噂通りだ!!神殿を侮辱するなど変人め!王弟と言えど所詮は辺境伯という立場を忘れたか?あんたは研究だけに没頭していればよいものをっ」
挑発しやすい男、といった印象だったがやはりその感覚に間違いないらしい。
唾を飛ばす勢いで捲し立てる神官長は両手を広げると宣言した。
「聖騎士らよ、大司教様のお達しだ。ラキュウス辺境伯は神殿の教義に歯向かう反逆者。殺してよい!」
声を高らかに告げる神官長の言葉に騎士らが声を挙げたが、すぐ後方に控えていた騎士はおそるおそるといった様子で問う。
「……神官長、それは敷地内に侵入してきた場合の対処では……」
どうやらまともな人材もいるらしい。しかし、神官長がその騎士の言葉に耳を傾けるわけがなく。
「判断は私に任されている、よいと言ったらよいのだ!おい、あの男はどうした!?」
「先ほどまで近くにいたと思うのですが……」
誰かを探す彼らのやり取りを前に、ラキュウスは馬上で静かに剣を抜いた。
今頃、レナードとベリル達が内部を改めているに違いない。
レナードには本体とは別に数名の兵を連れさせている。
そしてスレイと名乗る男の誘導で神殿に繋がる地下通路を通って中に侵入している手筈だ。