冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
第九章 それぞれの居場所へ
かつての婚約者
王都の中央聖騎士団が現れたという急報を受け、ヒストリアはルーメンを見遣った。
オリハルト公爵が準備があると言って出て行ったのは、この予感があったからだろうか。
「――公爵に伝えてくれ、俺が対処する」
切迫した雰囲気の中、ルーメンが立ち上がり兵士に告げた。
それから冷静にヒストリアへと視線を移す。
「明日は婚礼の儀だ。オリハルト公爵と殿下と共に、君は先に王宮に侵入しろ。あとで追いつく」
「待て、ルーメン。オリハルト公爵の覚悟を聞いていなかったのか?」
ベルナルドは厳しい声で制し、眉根を寄せ立ち上がった。
当然だが伝令の兵は動揺し、ベルナルドとルーメンを交互に見遣る。
「勝手に先走り申し訳ございません。しかし、殿下……公爵の貴重な兵力を今使うのは勿体ない、それだけです。ここは温存していただきたい……」
ルーメンはベルナルドに対して粛々と答えた。
ヒストリアは二人に口を挟むことは出来ず、ただ見守るしかない。
しかしふと気づく。
ルーメンのいつになく感情の読めない表情は、もしかすると真意が別にあるのではないか。
万が一にも神殿に氷像を制圧されては分が悪くなるため、確実に騎士団を退けたいという狙いがあってもおかしくはない。
嘘は告げていないだろうが、きっと公爵を前に出させないための大義名分だ。
ベルナルドは逡巡したのち瞬き、兵士に向かって告げた。
「……良いだろう。至急オリハルト公爵へ伝えてくれ。彼が対処する。公爵は私と共に出立する準備を」
ベルナルドの回答を得た兵士は敬礼を示すと直ぐに部屋を出て行った。
「ヒストリア。いいな」
ルーメンの意図に見当はついたが、事後に確認を取る物言いにヒストリアは双眸を眇めた。
「いいもなにも、そうするのでしょう。私のことは心配じゃないのかしら?」
「オリハルト公爵とベルナルド殿下がついている。それに直ぐに追いつくと言っただろう。君を傷つけさせは……」
「分かったわよ。構わないわ」
相変わらずの感情を挟まない回答に、もどかしさを通り越し諦めを感じたヒストリアは小さく吐息を零すとルーメンの言葉を遮った。
別行動をとること自体は納得している。
ルーメンの決断力もその判断も、信頼している。
ただ、勝手にベルナルド達に預けられたことに些か物申したいといった感情があっただけだ。
そんな気持ちを知らないであろうルーメンは、ヒストリアの肩に手を添えると続けた。
「侵入後、もし可能ならエリザベートを探し我々が味方であることを伝えろ。公爵と殿下が居れば証明になるはず。ロイドと神殿の情報を得るんだ」
するとベルナルドがルーメンの手を制して困惑した様子で口を開く。
「ルーメン。彼女に説得させる気か?エリザベートはヒストリアを嵌めた張本人だ……」
ベルナルドの言わんとすることにヒストリアは眉尻を下げ、それから肩で息をつきルーメンを見上げた。
「――分かったわ」
姉妹の確執を危惧しているのだろう。
しかし、今のヒストリアはこの窮地を理解している。私怨よりも優先すべきことがある。
ベルナルドへ向き直り、ヒストリアは静かに口許へ笑みを浮かべた。
「殿下、ご安心ください。状況は弁えていますので姉妹喧嘩は後にいたします……もちろん姉が応じてくれるなら、ですけれど」
オリハルト公爵が準備があると言って出て行ったのは、この予感があったからだろうか。
「――公爵に伝えてくれ、俺が対処する」
切迫した雰囲気の中、ルーメンが立ち上がり兵士に告げた。
それから冷静にヒストリアへと視線を移す。
「明日は婚礼の儀だ。オリハルト公爵と殿下と共に、君は先に王宮に侵入しろ。あとで追いつく」
「待て、ルーメン。オリハルト公爵の覚悟を聞いていなかったのか?」
ベルナルドは厳しい声で制し、眉根を寄せ立ち上がった。
当然だが伝令の兵は動揺し、ベルナルドとルーメンを交互に見遣る。
「勝手に先走り申し訳ございません。しかし、殿下……公爵の貴重な兵力を今使うのは勿体ない、それだけです。ここは温存していただきたい……」
ルーメンはベルナルドに対して粛々と答えた。
ヒストリアは二人に口を挟むことは出来ず、ただ見守るしかない。
しかしふと気づく。
ルーメンのいつになく感情の読めない表情は、もしかすると真意が別にあるのではないか。
万が一にも神殿に氷像を制圧されては分が悪くなるため、確実に騎士団を退けたいという狙いがあってもおかしくはない。
嘘は告げていないだろうが、きっと公爵を前に出させないための大義名分だ。
ベルナルドは逡巡したのち瞬き、兵士に向かって告げた。
「……良いだろう。至急オリハルト公爵へ伝えてくれ。彼が対処する。公爵は私と共に出立する準備を」
ベルナルドの回答を得た兵士は敬礼を示すと直ぐに部屋を出て行った。
「ヒストリア。いいな」
ルーメンの意図に見当はついたが、事後に確認を取る物言いにヒストリアは双眸を眇めた。
「いいもなにも、そうするのでしょう。私のことは心配じゃないのかしら?」
「オリハルト公爵とベルナルド殿下がついている。それに直ぐに追いつくと言っただろう。君を傷つけさせは……」
「分かったわよ。構わないわ」
相変わらずの感情を挟まない回答に、もどかしさを通り越し諦めを感じたヒストリアは小さく吐息を零すとルーメンの言葉を遮った。
別行動をとること自体は納得している。
ルーメンの決断力もその判断も、信頼している。
ただ、勝手にベルナルド達に預けられたことに些か物申したいといった感情があっただけだ。
そんな気持ちを知らないであろうルーメンは、ヒストリアの肩に手を添えると続けた。
「侵入後、もし可能ならエリザベートを探し我々が味方であることを伝えろ。公爵と殿下が居れば証明になるはず。ロイドと神殿の情報を得るんだ」
するとベルナルドがルーメンの手を制して困惑した様子で口を開く。
「ルーメン。彼女に説得させる気か?エリザベートはヒストリアを嵌めた張本人だ……」
ベルナルドの言わんとすることにヒストリアは眉尻を下げ、それから肩で息をつきルーメンを見上げた。
「――分かったわ」
姉妹の確執を危惧しているのだろう。
しかし、今のヒストリアはこの窮地を理解している。私怨よりも優先すべきことがある。
ベルナルドへ向き直り、ヒストリアは静かに口許へ笑みを浮かべた。
「殿下、ご安心ください。状況は弁えていますので姉妹喧嘩は後にいたします……もちろん姉が応じてくれるなら、ですけれど」