冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~

印の意味と三つの約束

かつて、シルドバーニュには献身を体現したような慈悲深い少女がいた。

人々のために瘴気を浄化する歌を歌い、結界を張った少女は、国を愛し、守るために力を使った。

それが正しいことだと信じていた。




ーーーーひとりの魔法使いによって異界へと繋がる門が開かれ、そこから溢れた瘴気は地上のすべてを蝕もうとした。

瘴気を浴び続けた生き物は異形の怪物へと変わり、地上はゆっくりと不毛の地へ変わってゆく。

しかし、シルドバーニュに生まれた平民の少女によって、瘴気は歌で浄化され、人々に希望をもたらした。

みな少女を崇め、そして求めた。

莫大な聖力を持つその少女を大聖女と呼び、各国が手中に収めんとし、やがて大聖女の存在は争いの火種となった。



国を救う大聖女を隠せ。

シルドバーニュの王は命じ、大聖女を神殿に閉じ込めた。
そして奴隷のように管理し、結界を張らせ、国を浄化させ続けた。

大聖女は純真無垢で健気な娘だった。

多くの人間が守られるのなら、親と引き離され奴隷のように働かされても、人々のためにと歌った。

それを不憫に思っていたのは、魔法使いの力を持っていたために同じように神殿に幽閉されていた王子だった。

二人は似たもの同士、日陰の存在。

直接言葉を交わせるような立場ではなかったが、稀に姿を見るその一瞬が、唯一の心の支えだった。

しかし二人に希望はなかった。


善意は搾取され続けるだけ。

やがて少しずつ力を失い、大聖女は国の全てに結界を張ることが出来なくなっていった。

それを大聖女が力を使うのを嫌がっていると国は責任を押し付けた。

人々は王の言葉を信じ、神殿の外から大聖女をなじった。


外の世界は大聖女に冷たかった。


自由のない孤独を強いられ、結界を張り続けた結果、力が尽きてくるとその責任を糾弾される。

そして民衆の不安が加熱した末に、大聖女はとうとう断頭台へと連れ出されたのだ。

もはや純真無垢な心は濁り、使い捨てられた大聖女は失望して呪いの言葉を遺した。

「私は間違っていた。私はこの国を愛していたのに、……結界など要らない、この国に大聖女など要らない。もうシルドバーニュに大聖女は生まれない。滅びてしまえばいい」

大聖女の首が飛んだ瞬間、残っていた結界は消えた。


大聖女の作った結界は、並の聖女では再構築できない。
王は王子に頼み込んで、死んだ大聖女と約束をした。


王子の魔法は死者との交信が齎す奇跡だったのだ。


呪いの消滅と人々の記憶の改竄を引き換えに、大聖女はシルドバーニュに三つ望んだ。


一つ、シルドバーニュは聖力を持つ聖女を大切にし、その証として大聖女を王族に迎え入れること。

二つ、人柱となる大聖女は、貴族に生まれる。印を手に宿す者を大聖女の証とする。

三つ、この約束に試練を与える。もしも約束を違えたなら、国は傾く。

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