冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~

ヒストリアの知らない世界

自害しようとしたほどに荒んだ気持ちは完全に払拭されたわけではなかったが、朝食を食べながらヒストリアは身の上を話すべきか悩んでいた。
ついこの間まで一つしか選択肢はないと思い込んでいた暗闇に、魔法使いによって別の道を示す光を与えられたことで心が揺らぎはじめていたからだ。
この家に連れられてきた時は、残された食料で空腹を満せども命を繋ぐ行為は余計に心をざわつかせるだけだったが、硬い黒パンも塩気が少しキツい干し肉のソテーも、今この瞬間に口にしているものは腹だけでなく心にも染みわたっていく。
希望、と呼んで良いのか認めるのには迷いがあるが、しかし眩いほどの光でないものの魔法使いの言った”考える”という曖昧な状態を甘受する気持ちにさせたのだ。

しかし結局、追放された理由はまだ言葉には出来なかった。改めて言葉にするには、この身に起きた出来事の記憶を再度なぞらなければならない。そうする勇気がまだなかったのだ。
「……いずれ、私のこと、あんたに話してもいい……」
かろうじて示せたのはその一言で、魔法使いは追求することなく「そうか」とだけ相槌を打った。



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