冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
――――ロイドは数時間後には城に上がらねばならないというのに、グラスを傾け黄金の蜜のような酒を口にしていた。

無駄な興には付き合いきれないと、自室に戻ろうとすれば背後から声がかけられた。

「ところで、明け方のヒストリア断罪劇を本当に見に来ないのかい?君はヒストリアの実の姉だ。僕は父の代理として登城するが、そこに君が同伴していてもさして問題ない気がするけどね……」

勿体ない、と言わんばかりの声音は甘かった。

「必要ないわ」

淀みなく答える。
ロイドという人間は相変わらずねちっこい男である。

「僕らの勝利の瞬間だぞ?やっとあの男から最高のかたちで権威を奪うことができる」

「結果はもう決まっているじゃない。それをわざわざ確認しに行くのは弱者よ」

「僕を非難するのか?酒が不味くなるなぁ」

不機嫌を隠すつもりはないようで、拗ねたように口を尖らせる。

こういうところが好ましいのだろうか。

他者の警戒心を解くような優男。
なまじ顔が良いばかりに、裏の顔も知らないご令嬢達は遊び相手にロイドを求めたがる。

「……ロイド。あなた、随分と興奮しているように見えるわ」

窘めの言葉を残しエリザベートは部屋を去った。

すれ違う使用人にはもう何度も練習し洗練された笑みで対応する。

あとは結果を待つだけ。

断罪劇の行方は明日の正午にはフランドール家に正式に伝わるだろう。

それまでは憐れな妹の身を案じ、信じられないとばかりに泣く用意をしていればいい。
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