冤罪で聖印を奪われた令嬢、辺境で本物の大聖女になる ~傲慢令嬢ヒストリアの救済証明~
猫にしても、犬にしても、ヒストリアが近づこうとすれば彼らはいつだって毛を逆立て威嚇してきた。
父から猫を贈ってもらった時もそうだ。七歳の誕生日に買ってもらった猫はなぜかヒストリアの腕の中に納まることを嫌がった。警戒し、寄り付かず、いつもエリザベートの元へ行ってしまう。
主人に懐かない猫が気に入らず、別の猫に交換するよう父に強請って新しく迎え入れたが、その猫も同じだった。ヒストリアは大泣きして父とウィラー夫人が慰めてくれたが虫の居所がそれで収まるわけがなく、今度は猫でなく犬を求めた。結果的に犬の方が厄介だった。
大きく口を開いて吠えつかれ、歯を剝き出しにする子犬はとても可愛いとは思えなかった。
「捨ててきて!ぜんっぜんかわいくない……毛がつくし、くさいし!なんなのこれ!」
泣きわめいた結果、その犬はエリザベートの友人の子爵令嬢の家に引き取られることとなり、使用人たちが陰で「犬は人を見抜くって言うじゃない」などと話しているのを偶然聞いて酷く苛立ったものだ。
「そんなわけない……うそよ!ねぇ誰?今言ったの!クビにしてやるからっ!」
陰口に落ち込んで縮こまるヒストリアではない。
この国を背負う大聖女で、そして王太子の婚約者でもあるのだから、もっと敬うべきだと信じ込み不敬だと激しく憤った。そしてその日、一人の侍女を首にした。彼女は実家からも縁を切られたというが、自業自得だとヒストリアは胸に沸いたもやもやとした感情を飲み下した。

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