忘れられない映画[1話]
そんな話をしていたら、あっという間に下駄箱についていた。
「あ、じゃあまた…」
なんとなく気まずい空気が流れたまま、私は下足に履き替えて柊くんに背中を向けた。
普段、部活では誰ともあまり会話をしない。
ましてや柊くんは近寄りがたくてほとんど初めての会話に等しい。
今日に限ってどうして世間話なんて振っちゃったのかな。
「ストップ」
私は背負っていたリュックをまた引っ張られた。
「なっ…なに」
「もしかして鑑賞会も毎回あれ書いてんの?」
「へ?」
「さっきのノート」
映研部では毎週水曜日に部員オススメの映画鑑賞会があって、実はそれがいちばんの楽しみだったりする。
もちろん映画分析が出来るから。
「…えーっと。うん、はい」
「ふーん」
本当はあまり言いたくなかった。
けど柊くんにはノートの存在が知られてしまった。下手に嘘をつくと、今後の鑑賞会で映画分析ができなくなる。
それだけは避けたい。
「え、なんで?」
「なんとなく。
じゃ、おつかれ」
柊くんはそう言っていつの間にか靴を履き替えて校門へと歩き始めていた。
「何だったの…」
その言葉と共に、私の右肩からはズルりとリュックのベルトがだらし無く落ちた。