忘れられない映画[1話]
《今日の映画は群像劇。
主人公の背中を追うようなカメラワークが面白い。
表情をあまり映さない。
心情を観てる側に委ねられてる感じ。
特に最後のシーンの音楽描写がいい。》
《ずるい!》
最後にそう書き加えたところで部室が明るくなる。
鑑賞会が終わった合図。
2時間の上映はあっという間だ。
気づけば書いていた映画ノートは文字や矢印、マーカーだらけになっていた。
私はノートを両手で持ち、改めて内容を見返す。
「そう?ラストは微妙じゃね?」
背後から声がして、飛び上がるほど驚いた。
素早く振り返るとそこには後ろの席から身を乗り出して私の手元を覗き込む柊くんがいた。
「ちょっ、」
私はノートをバタンっと閉じる。
「い、いつから居たの」
焦っている私をよそに、柊くんは椅子に深く座り直し、背もたれにもたれた。
「すごいね。ガチ分析じゃん」
私の質問は見事にスルーされ、代わりにそんな言葉が返ってきた。
「勝手に見るなんて、さいあく」
「ちょっとだけだよ」
私はギロリと睨んだ。
ちょっとならいいとか、そういう問題じゃないのに。
「それより、俺はラスト好きじゃなかったけどね?ありきたりで」
変わらず椅子にもたれたまま言うもんだから、挑発されているようにも感じた。
「そうかな。主人公のやるせない気持ちと音楽が合ってたし、流れるタイミングもよかったよ。あの音楽、ちゃんと心情を表現してると思う。私はああいうふんわりとしたラストシーンが好き」
一気に喋り終えると、柊くんがキョトンとしていた。
それからすぐに、面白いものでも見たかのような表情に変わった。
「何を観てんの?」
柊くんは椅子にもたれていた体を起こし、今度は机に両腕を置いた。
必然的に近くなった距離に、私は上半身を後退させる。
「な、何って?」
「普通さ、ストーリーとか役者の演技しか見ないよ」
「……」
「楠木さんは“作り方”を見てるんだ?」