ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。
「噴水突き落とし事件の目撃者探しの方は難航しています。申し訳ありません」
ルーシーから謝罪され、アーサーは面食らった。てっきり「謝るなんて言葉、私の辞書にはないですね!」ぐらいの性格だと思っていたのに。
「そ、そうか……」
「なんで動揺するんです?」
「別に」
いぶかしげに首をかしげるルーシーは、よく見れば普通に可愛らしい女子生徒だった。
むしろアーサーに対して色目を使う令嬢たちに比べ、真っ直ぐに向き合ってくれるぶん好感度が高い。最初の印象がぶっ飛んでいただけで、実家の凋落に負けない努力家なのもポイント高い――と考えて、アーサーはぶんぶん首を振った。落ち着け、自分。
「……これも嘘の事件なんですかねえ」
挙動不審なアーサーにかまわず、ルーシーは肩をすくめた。
「そうかもな。となると……そもそも何も起こっていなかったということになるが」
「クララさんはどうしてそんなことしたんでしょう」
「殿下の気を引きたかったのか?」
だがローランド王子は、王家と公爵家の婚約をないがしろにするような人物ではない。普段ならば。
「――やはり殿下の言動がおかしい」
アーサーは苦虫を噛んだような顔だった。
「くそっ、どういうことだ」
「――洗脳、とか」
そう言ったルーシーの瞳がチカリと光った。アーサーは息を呑む。
「ルーシー、それは――」
ドンドンドン!
いきなり部室のドアが乱暴に叩かれる。外から部員たちの声がした。
「ちょっとルーシー、いる?」
「開けるよ? ヘンなことしてないでしょうね!」
ヘンな、とはなんだ。アーサーはうんざりしてバンとドアを開け放った。
「やましいことはない。なんだ」
「ぎゃああ、侯爵子息さま! 相変わらずまぶしい!」
廊下にたかっていた新聞部員の男女が目を押さえてのたうち回る。ルーシーはあきれて厳しい声を出した。
「そーゆーのいらないから。何があったの」
「あはは、ごめん。あのさ――新聞部を廃部にするって学園側が言ってきたんだよ」