ゴシップ記者令嬢なので婚約破棄の真実を暴いたら侯爵令息さまに付きまとわれています。邪魔です。

熱愛宣言!?

  ✻ ✻ ✻


「ルーシー・ミルフォード、君がストーカーだという訴えが出された。ローランド殿下への付きまといが度を越えている、と」

 指導室に行くと、教師は重々しく告げた。
 呼び出されたルーシーはいちおう真面目な顔で聞いている。隣にはアーサーも付き添っていた。「たぶん今回の件のせいだろうから」と。

 教師いわく――。
 学内に設置された王族専用のサロンにルーシーが張り付いている。
 ルーシーは履修していないはずの授業にもぐりこみ、王子を観察している。
 王子の所有する本が紛失したのだが、それが新聞部の部室前に落ちていた。

「――などなど! 申し開きがあれば言ってみなさい」

 並べられた罪状を聞いていたルーシーは、深刻な顔で小さく手をあげた。

「ひとつ、あります」
「なんだ」
「殿下所有の本なんて貴重なネタ、キッチリ部室内に確保せずしてなんの新聞部員でしょう! それは誣告(ぶこく)のための偽の訴えかと」
「威張るんじゃない。まあそれについては調査しよう。他には」
「すべて認めます」

 ルーシーはあっさり言い放つ。教師が机についていた肘がガクンと落ちた。

「なに?」
「殿下のサロンを外から窺いましたし、授業にももぐりこんでますし、何も否定することはありませんねえ」
「君、付きまといを認めるのか」
「いいえ、これは正当な取材です」
「やってることは変わらん! 王族に対してなんたる不敬、やはり新聞部は廃部にするべきだな!」

 キラン。ルーシーの目が光る。ずい、と乗り出す姿勢から圧がにじんだ。

「先生、それは危険ではないかと思います」
「な、なんだ」
「王家という絶対的な存在だからこそ、その情報は市井へ開かれるべきではありませんか? 敬意はあって当然ですが、それがベールとなってしまっては民と王との距離が次第に離れていってしまいます。この状況は統治システムとして破綻へ向かうモデルだと愚考しますがいかがでしょうかっ」
「うむ……?」
「ワタクシはそのような危機を回避するため殿下の個人情報をも探り出し生徒たちに愛される姿を発信すべく日々活動しているのであります!」

 完全に詭弁だ。勢いにタジタジとなりながらも教師は丸め込まれるのに抵抗する。

「黙れ! 君はただ殿下のことをなんでも知りたいだけだろう、この強火ファンめ!」
「先生、お言葉ですが」

 微笑んで割り込んだのはアーサーだった。半歩前に出てルーシーを肩でかばう。

「ルーシーの行動はすべて取材の範囲内だと僕が保証します」
「む。それはどんな根拠で」
「彼女は殿下のファンではありません。何故なら――彼女の好意は、この僕へ向けられているのですから。ね、ルーシー?」

 やわらかな声色で告げる、とんでもない嘘。
 教師はあんぐりと口を開けたが、同時に廊下からも黄色い悲鳴があがった。どうやら大勢がこのやり取りを盗み聞きしていたらしい。


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