空を知らない君に贈る唄

時川はさらに説明を続ける。

「あくまで仮説....俺の想像の範疇を出ないけど、凛の話によると、

押し寄せてきた異喰の中の数⼗体が、⼀番近くにいて、なおかつ⼿⼀杯

だった前線部隊を⾷べずに、後⽅⽀援の俺達の⽅に迷わず向かって

いったらしいんだ。」

澄華の⼼臓が跳ねた。

最前線の隊員――⾷べやすい、⽬の前の“ご馳⾛”を無視して、

後⽅の⾃分たちに狙いを定めた?

「異喰に......知能がある、って...⾔いたいんですか?」

そう尋ねた澄華の声は、⾃分でも信じられないほどに震えていた。

「……」

時川はその⾔葉に俯くと、静かに息をついた。

その沈黙の重さに、陽⽃も澄華も絶句した。

⼆⼈の頭の中で、凛や時川の⾔葉が繰り返される。

異喰に――知能がある?

いや、そんな突⾶な考えが現実に存在するのか。

胸の奥で寒気がする。

「俺は、そう考えてる。」

時川はそう⾔って、包帯に隠れた左⽬で、⼆⼈をじっと⾒つめる。

静かな声が、部屋に響き渡った。

凛も机に両肘をつき、顔の⽬の前で指を組んだ。

――室内は戦場の異常さだけを切り取ったかのように、

静かに、だが確実に緊張で張り詰めていた。

「って、⽬を覚ました直後にこんな事⾔われても困るよな。

………今⽇はここまでにしようか。」

時川は苦笑してそう⾔うと、ゆっくりと⽴ち上がった。

「変な話ししちゃってごめんな。お大事に。」

⼩さく頭を下げ、リビングを出ていく。

数秒後、⽞関のドアが閉まる⾳が響き、それが完全に⽌むと、

リビングには重く静かな空気が流れ込んだ。

誰も⼀⾔も発しない。

⻑く、張り詰めた沈黙が続く。

まるで時間そのものが⽌まったかのように、部屋の中の空気が

凍りついた。

澄華と陽⽃は、互いの顔をちらりと⾒た。

⾔葉を交わす勇気も、気⼒も湧いてこない。

ただ、戦場での記憶と失われた仲間たちの影が、⼼の奥で静かに重く沈んでいた。
< 165 / 165 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:15

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
――――転校初日。 僕の隣の席になった女の子は、とんでもない変人でした。 授業中は百パーセント寝ていて、 人の名前は覚えないうえに料理も壊滅的。 なのに―― 「私、天才だから」 マジックだけは誰にも負けない、プロのマジシャン。 そんな神宮寺さんに、 なぜか僕は目をつけられた。 「ねえ、転校生くん」 「なに?」 「私と一緒に、謎を解こう」 「なんで僕?」 「暇そうだから」 「あっ、そんな感じ.....?」 ――♢―――♢―――♢―――♢―― 天才すぎる変人マジシャン 神宮寺 久藍 ♀ × Mr.普通の男子高校生 佐藤 直樹 ♂ ――♢―――♢―――♢―――♢―― 「ちょいちょい泣きボクロくん」 「へっ?」 「犯人、分かったよ」 「えぇ、うっそ」 「ほんと~!」 「なっ、え?どうやって?」 彼女はにっこり笑った。 「種明かしはショーの後で、かな。」 ――今日も神宮寺さんの、 華麗なるショータイムが始まる。 ✎____2026/8/23
表紙を見る 表紙を閉じる
全国模試1位 ……なのに友達ゼロ。 そんな私が入学したのは、 日本中の御曹司や令嬢が集まる超名門・桜華学園。 庶民の私は場違いなはずだった。 なのに―― 任された相手は、 学園中の憧れ『トップ4』!? ─♦──♦──♦──♦─ 努力家な貧乏特待生 朝比奈 紡 × 不器用な俺様御曹司 九条 湊 × 無表情な天才メガネ男子 一ノ瀬 律 × 甘え上手な子犬系プリンス 白石 陽 × 腹黒紳士な生徒会長 黒崎 玲 ─♦──♦──♦──♦─ 「俺から目ぇ逸らすな」 「君だけは特別なんだ。」 「紡ちゃんは今日も僕の隣ね〜!」 「他の3人には渡せないな」 最初は勉強を教えるだけだった。 ……そのはずなのに。 「......お前が好きだ」 「僕を、君の一番にしてください。」 「紡ちゃんだけは譲る気ないから。」 「答えはもう決まっているな?」 えっ、ちょ、ちょっと待って。 家庭教師って、 恋愛まで担当するお仕事でしたっけ!? 全国1位の特待生、 学園最強の御曹司4人に溺愛されています!!! ✎____2026/7/27
イケメンすぎる、君が好き。

総文字数/25,955

恋愛(ラブコメ)86ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
俺の彼女は、 誰が見てもかっこいい。 女子からは毎日のように告白されるし、 「彼氏にしたいランキング」があれば たぶん毎年一位を取る。 そんな学校一の王子様が俺の彼女だなんて、 未だに信じらんないな。 ――♢―――♢―――♢―――♢―― 学校中の憧れなイケメン女子 桐生 葵 ♀ × 彼女に毎日惚れ直すメロメロ彼氏 小野寺 遥 ♂ ――♢―――♢―――♢―――♢―― 「葵、それ俺が持つ!!」 「んーん、大丈夫。私のほうが力あるし」 今日も俺より、彼女のほうがかっこいい。 ただ廊下を歩いてるだけなのに、 今日もほんとかっこよすぎる。 だけど―― 「遥、その……可愛いって言われると照れる」 俺だけが知ってる、真っ赤な照れ顔。 その顔に、何度恋をしたかわからない。 みんなの前では王子様なのに、 俺の前ではちゃんと"彼女"になってくれる葵が、世界で一番愛おしい。 そんな彼女を、 俺は今日も、全力で好きになる。 ✎____2026/7/20

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop