司くんに愛されすぎてる。
「さっきから聞いてる限り、婚約というよりは幼稚園児の口約束に聞えるんだけど?」
「幼稚園じゃない、保育園だっ」
ため息交じりの馬鹿にしたような和樹の言葉に、“司”くんは噛み付く。
――保育園?
「幼稚園でも保育園でも、どっちも同じ―…」
「くすのき保育園?」
ぽろっと口をついて出た言葉が、和樹の声を遮る。
鋭く細かった二人の目が丸くなって、その視線が私に集まる。
「うんっ」
“司”くんの表情はみるみる明るくなっていく。
ぱああっていう効果音が付きそうな笑顔。
…私は、この表情を知ってる。
ほつれた糸がほどけるように次から次へと甦る。
ぼんやりとしていた丸いほっぺたの輪郭が、くっきりと浮かび上がる。
『かなちゃんっ約束だよ。』
『うん、約束!』
ぜったいぜったい、ケッコンしようね―…
甘いミルクみたいな匂いと、マシュマロみたいな感触まで、ぜんぶ思い出した。
「はぎの、つかさくん?」
曖昧に紡いだ名前に。
彼はさらに頬を緩めて
「はいっ」
と明るい返事をした。