司くんに愛されすぎてる。
「奏を殺す気か、1年」
「そんなわけないだろ!かなちゃんを離せ!」
冷ややかに伏し目で睨む和樹に、はぎのくんはギャンと噛み付く。
ゴールデンレトリーバーと、チワワの喧嘩を見てるみたい。
はぎのくんが私を取り返そうと手を伸ばした時。
今度ははぎのくんの指先を掠めて、ピシャッと教室のドアが閉まった。
「他クラス、しかも上級生の教室に入るなんて許されないわよ」
やったのは、瑠璃だ。
「あっぶな!ていうか開けて!ください!」
ドア越しにくぐもったはぎのくんの騒がしい声が聞こえる。
瑠璃は煩わしそうに眉を顰めて息を吐く。
ドアが開かないようにそこに寄りかかりながら。
「もうすぐチャイムが鳴るから帰りなさい。駄犬が」
「“だいぬ”ってなに!?犬ってこと!?」
ドンドン!とノックしてるのか、ドア板が揺れる。
その振動を受けても、瑠璃は涼しい顔で無視を貫いた。
「奏、大丈夫?」
私の肩に手を置いたままの和樹が、ちょっと不安そうな顔で私を見下ろす。
「うん、平気だよ。びっくりはしたけど」
心配性。
へへ、と何でもないことのように笑ってみせる。
実際、驚きの連続ではあったけど、そんなに嫌な思いもしてないしね。
「そっか」
肩に置かれた手に力が入って、和樹の顔がなぜかさらに暗くなる。
それに引っ掛かったけど、その間に本当にチャイムが鳴り始めた。