司くんに愛されすぎてる。


「奏を殺す気か、1年」

「そんなわけないだろ!かなちゃんを離せ!」


冷ややかに伏し目で睨む和樹に、はぎのくんはギャンと噛み付く。

ゴールデンレトリーバーと、チワワの喧嘩を見てるみたい。




はぎのくんが私を取り返そうと手を伸ばした時。

今度ははぎのくんの指先を掠めて、ピシャッと教室のドアが閉まった。



「他クラス、しかも上級生の教室に入るなんて許されないわよ」



やったのは、瑠璃だ。


「あっぶな!ていうか開けて!ください!」


ドア越しにくぐもったはぎのくんの騒がしい声が聞こえる。



瑠璃は煩わしそうに眉を顰めて息を吐く。

ドアが開かないようにそこに寄りかかりながら。



「もうすぐチャイムが鳴るから帰りなさい。駄犬が」

「“だいぬ”ってなに!?犬ってこと!?」



ドンドン!とノックしてるのか、ドア板が揺れる。

その振動を受けても、瑠璃は涼しい顔で無視を貫いた。



「奏、大丈夫?」


私の肩に手を置いたままの和樹が、ちょっと不安そうな顔で私を見下ろす。



「うん、平気だよ。びっくりはしたけど」


心配性。

へへ、と何でもないことのように笑ってみせる。



実際、驚きの連続ではあったけど、そんなに嫌な思いもしてないしね。



「そっか」


肩に置かれた手に力が入って、和樹の顔がなぜかさらに暗くなる。

それに引っ掛かったけど、その間に本当にチャイムが鳴り始めた。

< 20 / 27 >

この作品をシェア

pagetop