司くんに愛されすぎてる。

「げぇ、やばっ」

さすがのはぎのくんも、チャイムが鳴ってるのにこの場にいるマズさは知っているらしい。

ドア越しに焦ってる声が聞こえた。



「かなちゃん!」


ドアの向こうから、私の名前を呼ぶ声がする。

その声色があまりにもまっすぐで、ドキリとした。



「――また、来るから」



さっきまでの騒がしい声と違う、真剣なトーン。

面食らったけど、すぐに「待っててねー!」と元気な声に戻ってドタバタと走り去る音に変わる。



ほんとうに、嵐みたいにさわがしくて、不思議な子。



もうすぐチャイムが鳴り終わる。
先生も教室に入ってきたから、私も和樹も瑠璃も、何も言わずに席に着いた。


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「災難だったわね、今日は」



始業式後のお昼前。

午前放課だから今日はこれでおしまい。



帰り支度をしながら、瑠璃と話す話題はやっぱり今朝のこと。


「まぁ、ね。びっくりだよね。
保育園ぶりの再会……」



そう。10年以上ぶりの再会。
なのにそうとは思えない距離の近さだった。



「当時は仲が良かったのよね、彼と」


じ、と見つめてくる瑠璃に、視線を彷徨わせて曖昧に頷く。

「ぜんぶ思い出したわけじゃないけど。
よく泣いてたのを助けてあげてたような……?」

「昔から優しかったのね、奏」


ふふ、と目を細める瑠璃は嬉しそう。

そんなふうにストレートに言われると、ちょっと照れちゃうよ。



「そうやって誰にでも優しいから、厄介なのに好かれちゃうのよ。ね?櫛本くん?」

「誰のことかわからないけど。そっくりそのまま返しとくから」


爽やかに黒い応酬。
もう、私越しに和樹を覗かないでよ。

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