女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
しばらくうーんと悩んでから、思い切ったようにぱっと顔を上げる。

「雪音は男性恐怖症を克服して、両親に幸せな姿を見せたいんだよね」
「うん」
「今度こそ頑張りたいんだよね?」
「う、うん」

覚悟を確かめるかのごとく、目を釣り上げてずいっと顔を寄せてきた。
なにを言われるのかと緊張する。

「最近マッチングアプリが流行ってるの」
「マッチングアプリ?」

それって、よく広告とかで見かける出会い系の? それが一体どうしたと言うのだろう。
沙友里はスマホの画面を見せてきて、アプリを開いて見せた。

トップ画面には、『気軽なお友達から恋活、婚活まで! 日本最大級の出会えるアプリ、利用者数No.1』と書かれている。

「これで男の人に慣れるっていのはどう?」
「マッチングアプリで⁈ む、無理だよ。知り合いだって緊張するのに。それにそう言うのちょっと怖かったりしない?」

「マッチングアプリって色々種類があるの。出会い系はおすすめしないけど、婚活用、恋活用とか分かれてて、これは話し相手とかライブ一緒に行く人とか、趣味が合う人を探すとかいう使い方なの。今時高校生だって使って付き合ってるし、普通だよ。
私も誰かと飲みたいのに都合が合う人がいないとかいうときに活用してるんだ」
「高校生でも……そうなんだ」

確かに、院内の同僚でもマッチングアプリで彼氏ができたという話を聞いたことがある。
しかしどれだけ安全と言っても、雪音のように普通に会話をすることすら難しいのでは、もし会ったとしても相手に気を遣わせるし失礼だろう。

「でも、やっぱり私には難しそう」
「うーん、じゃあお医者さんならどう? 職業も指定できるの。同業の人なら安心できるだろうし、話もしやすいとかない?」
沙友里は話しながらすごい速さでアプリ内を検索し、プロフィールらしきものが流れている。綺麗に装飾された長めのネイルがカツカツと画面に当たる音がした。

「あ、この人お医者さんだって。趣味は映画鑑賞。趣味について気軽に話できる人探しています、だって。雪音も映画好きだからいいかも。もしうまくいったら同業者だとお父さんも喜ぶんじゃない?」
「医師の方までいるの?」

院内の医師たちの勤務状況を考えると、よくそんな時間があるな、という感想だ。やっと取れた休日になんてアグレッシブなのだろう。体力のない自分だったら一日寝て過ごしてしまいそうなのに。
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