女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
「ちょっとスマホ貸して」
「うん?」
半ば強引に奪われどうするんだろうと思っていると、雪音のスマホにアプリをダウンロードしあっという間に会員登録をしてしまった。
【男性が苦手で克服したいのでお話相手になってくれる方探しています】
紹介文に目を見開く。
「え⁈」
「これでオッケーっと」

沙友里が満足げに頷くと、すぐにピコンと通知が鳴った。ハートのアイコンに、【あなたにマッチングリクエストが届きました】と文章が添えられている。それを皮切りに次々とそれは届いた。

「待って。わたしにはこういうのハードル高すぎるよ」
状況を理解し、慌ててキャンセルできないかとスマホをとり戻そうとするが沙友里に阻止された。

「だーめ。親孝行したいって決意したんでしょ? ここで尻込みしてたら一生彼氏なんてできないよ」
「でも……」

相談をしたのは雪音なので、力になってくれるのはありがたいが急展開すぎる。
そうこうしていると、チャット欄にメッセージが来た。

【都内なら今夜ご都合いかがですか。今ちょうど新宿に居るので】

「わ、話しかけられてる! どうしよう……」
「さっきの医者だわ! 新宿! 近いじゃない」

【ライムライトというバーにいます。少しお話できますか】

沙友里はささっと返信をした。
「すぐに場所教えちゃって大丈夫なの?」

「慣れた店だから安心なの。ここならもし何かあっても従業員の人に助けを求めやすいでしょ」
「やっぱり危ないんじゃない」
「もしもよ! そういう話聞いたことないもの。ねー? 助けてくれるわよね?」

ちょうど注文していた料理を運んできてくれた店長に、沙友里は調子良くウインクする。彼は二十代後半らしいが、仕事ができるのかすでに店を任されているそうだ。モデルと思うくらい背丈もありさらには顔も整っていて、沙友里のお気に入りだ。

「店内での揉め事はご遠慮ください」
彼は酔っ払いに絡まれるのは慣れているのか、沙友里は爽やかな笑顔で流されていた。

言い合っているうちに返事が来た。

【すぐに向かいます】

どんな人だろう。医師免許をとったくらいなのだから、これまでしっかり努力してきた人と言える。その点では真面目な人という印象だ。

「一緒に会ってあげるから大丈夫。一歩踏み出すと思ってさ。動かなきゃ始まらないよ」
「うん……」
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