女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
知らない男の人と思うだけで緊張で胃がキリキリとしたが、深呼吸して気合を入れる。そうだ、今度こそ変わらなくては。
暫くすると着いたと連絡が入り、店のドアからメガネ姿の男性が入ってきた。中肉中背で優しそうな雰囲気だ。
プロフィールの年齢には三十一歳とあったが、もう少し上に見える。
彼はキョロキョロと店を見回し、こちらを見つけるとぺこりと会釈をしながら近づいてきた。こちらはふたり居ることと、服装の特徴を伝えておいたのですぐにわかったらしい。
「初めまして、【ゲカ】です。【コロン】さんですか?」
アプリに登録してあったニックネームで挨拶する。コロンというのは沙友里の実家で飼っている猫の名前だ。種類はスコティッシュ・フォールドで、少し困っているように垂れた目が雪音と似ているといつも言われ、沙友里がその名前に決めた。
隣の沙友里の腕にしがみつき、咄嗟に返事ができずに頷いた。
ゲカがコートを脱ぐと、カウンターに雪音、沙友里、男の順番で座る。
「私はこの子の友達で【まめ太郎】です。コロンは男性と話すの苦手だから、今日は三人で会話を楽しみましょ」
沙友里が代わりに挨拶を返した。まめ太郎もまた昔、沙友里が買っていたペットでハムスターの名前だそうだ。
「大丈夫です。趣味が合う人探してたんですよ。気軽に話しましょ。さっそくですけど先月公開された【back to life】観ましたか?」
ゲカはにっこりと笑い話を始めた。
back to lifeは恋愛映画で、主人公は三十代の男性。学生時代から長年付き合った彼女を結婚直前に病気で失ってしまい、彼女を取り戻すために彼が学生時代の過去に戻って何度もやり直すストーリーだ。
雪音は沙友里と映画館へ行ったのだが、事前に原作となる小説を読んでストーリーをわかっていたのに号泣するほど感動した。
主人公である彼の切ない思いと彼女との付き合った歴史がとても感動的で、雪音もこんな大恋愛をできたらと憧れた。
沙友里と雪音が頷くとゲカは嬉しそうに話し出した。
殆どゲカと沙友里の会話であったが、ゲカは話が上手く会話は盛り上がった。相槌をうったり僅かであるが雪音も参加できて、相手に失礼にならなくてよかったとほっとする。こんな風に話せるのなら、少しずつ男性に慣れるためにちょうどいいかもしれない。
三十分ほど話していると、沙友里に電話が入った。
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