女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
予約は席のみだったらしく、その後は軽く食事をしてこその場は解散となった。
せっかくの高級料理だったのに、緊張で食べた気がしなかった。むしろ食欲などわかなくてなんとか詰め込んだ状態だ。

食事中はこれまでのふたり馴れ初めや、結婚後は仕事を続けるのか、式はいつするのかまで話題に出て、雪音が肝が冷えるたびに匠が飄々と答えていた。

(や、やっと終わった……)

時間は二時間ほどなのにとんでもなく長く感じ、終わった頃はへとへとだった。
院長を見送ると、断りを入れて化粧室へと急ぐ。食べたものを吐かないようにするだけで精一杯だ。

緊張が解けたからか、急に頭痛がしてきた。頭をハンマーで叩かれているようにガンガンと痛みが響き、視界もぼんやりとした。あまりよくない状態だ。

(早く帰ろう)
化粧室を出ると、廊下の先で匠が待っていた。

「顔色が悪いな」
「大丈夫です……」
「無理をするな。移動は急がない方がいい。少し休憩しよう」

匠が手を差し伸べるが、雪音はそれを拒んだ。

「触らないでくださいっ」
手を振り払おうと勢いよく体を動かしたら、ぐわんと目が回り視界が真っ暗になった。

「あ……おい! 雪音!」

崩れ落ちる寸前に、匠に抱き止められたのがわかった。

「雪音!」
匠の驚いた声を聞きながら、意識は遠のいた。

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