女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
ペットボトルの水の蓋をストローキャップに付け替え、オーバーテーブルに置くと、残りの飲み物を冷蔵庫に入れた。
「さぁ、明日は検査で忙しいからもう寝よう。寝不足だと結果が悪くなるぞ」
身支度を整えると秀夫が簡易ベットに寝そべった。
「そうね。でもほんとに元気なのよ。心配かけてごめんね」
雪音も仮眠を取ろうと、備え付けのソファベッドに横になる。
「ふたりとも、健康で長生きしてね……」
ふたりがいないことを想像するだけで孤独感に襲われた。
「ゆきちゃんが寂しくないように、長生きしなくちゃね」
ふふ、と真弓が笑い胸が苦しくなる。
それを言わせたのは自分だった。いつまでも変われずにいるからふたりに心配をかけている。
孫を抱きたいと言っていて、雪音に新しい居場所を見つけて欲しいと願っている。
今はまだいい。でもふたりがこれからもっと歳を重ねても同じように甘えて負担をかけるのか。
秀夫はひとまず回復したし、真弓は過労なだけで、ふたりとも余命宣告をされたわけでもない。それなのに無性に焦りがでて、早く家庭を持って幸せな姿を見せ安心させなくては。
(変わりたい)
雪音は決心をすると、掛け布団を頭から被りぎゅっと目を閉じた。

数時間の仮眠をとると早朝に自宅に帰り、シャワーをさっと浴びて身支度を整え、今度は勤務のために病院へ急いだ。
検査中の付き添いは秀夫に任せきりになってしまうが、事情を話して午後を半休にすれば昼過ぎからは送迎や家のこともできる。
勤務開始より一時間ほど早く戻ると、雪音は決心が鈍らぬうちにとは匠の予定を調べた。
今日は日勤らしいので、勤務前に話ができないかとメッセージを送る。
するとすぐに返事が返って来た。
【オンコールで明け方まで手術に入ってた。今仮眠室にいる】
昨晩の救急の対応だったのかも。とすると、ほぼ徹夜だっただろう。
疲れているところに申し訳なさを感じたが、今を逃したらまた勇気が萎んでしまう。すぐに向かうと返事をして急いだ。
仕事中に無駄な話をすると怒られるかと思ったが、匠は特に気にした様子もなく部屋に迎え入れてくれた。
「雪音からの連絡は初めてだな。何かあったか?」
匠は朝食の時間だったらしく、座敷で胡座をかきコンビニのサラダを食べていた。
「あ、あの……」
ごくりと唾を飲み、匠を挑むように見る。胸の前で握りしめた両手が小刻みに震えていた。
「座ったら?」
< 37 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop