女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
目頭が熱くなったが、試着で泣いてたら恥ずかしいと思い堪えた。
雪音が顔をあげると、匠は目を丸くした。
揶揄われるかと思ったが、匠は優しく微笑んだだけだった。
「触れても?」
雪音が頷くと、頭にぽんと手が乗った。彼はいつもこれだ。年が離れているから子供だと思われているのかもしれない。
だんだんと慣れてきている自分の変化も嬉しかった。
「似合うよ。これにしよう」
重ねて着けられる結婚指輪もすぐに決まった。そちらはサイズの準備をしてもらうため注文だけとなり、婚約指輪はサイズが合うものがあり、雪音は刻印も何も無しでいいと、その日に着けて帰らせてもらうことにした。
***
匠との共同生活が始まり一カ月が過ぎた。
部屋は別々だし匠は仕事で留守がちだし、雪音も実家と行き来をしている生活なので、思ったよりも一緒に過ごす時間は少ない。
秀夫の勤務を見てきたからわかっていたつもりだったが、匠はそれよりももっと過酷に見える。
匠を含めた四人での食事を何よりも喜ぶので、定期的に食事会をしようということになり、もう二度もそれは開催された。一度目は外食だったが、二度目は雪音の家で、四人ですき焼きをつつくことになった。
少し前まで、匠と結婚することになるとは思ってもみなかったのに、今はこうして鍋を囲んでいることがとても不思議だ。
匠の気遣いは完璧で優しくて、彼が隣にいることにいつの間にか緊張しなくなっており、みんなで笑いながら食卓を囲んでいると、これが本当の幸せなのだと錯覚するほどだった。
入籍の日取りもふたりで話し合い、あと一週間後の四月一日にしようと決めた。
秀夫と真弓の体調も順調に回復しており、新年度の始まりということと、エイプリルフールというのがふたりの遊び心だ。
これは嘘の結婚なのだと、自分に言い聞かせるにはちょうどいい皮肉だ。
入籍前に匠の両親に会っておきたかったが、匠は気が進まなそうだった。
匠の両親は離縁していて、匠は父親と暮らしていたがあまり仲良くはなく、父親は自立しているのだから好きにすればいいというスタンスだそうで、別れた母親はというと、異性関係の素行が悪く何度も浮気を繰り返し家族を困らせていたそうで、匠は思い出すだけで腹が立つからとくに必要ないと言った。
匠の女嫌いは母親の悪いイメージに加え、容姿だけで判断し寄ってくるこれまでの女性たちが原因らしい。
雪音が顔をあげると、匠は目を丸くした。
揶揄われるかと思ったが、匠は優しく微笑んだだけだった。
「触れても?」
雪音が頷くと、頭にぽんと手が乗った。彼はいつもこれだ。年が離れているから子供だと思われているのかもしれない。
だんだんと慣れてきている自分の変化も嬉しかった。
「似合うよ。これにしよう」
重ねて着けられる結婚指輪もすぐに決まった。そちらはサイズの準備をしてもらうため注文だけとなり、婚約指輪はサイズが合うものがあり、雪音は刻印も何も無しでいいと、その日に着けて帰らせてもらうことにした。
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匠との共同生活が始まり一カ月が過ぎた。
部屋は別々だし匠は仕事で留守がちだし、雪音も実家と行き来をしている生活なので、思ったよりも一緒に過ごす時間は少ない。
秀夫の勤務を見てきたからわかっていたつもりだったが、匠はそれよりももっと過酷に見える。
匠を含めた四人での食事を何よりも喜ぶので、定期的に食事会をしようということになり、もう二度もそれは開催された。一度目は外食だったが、二度目は雪音の家で、四人ですき焼きをつつくことになった。
少し前まで、匠と結婚することになるとは思ってもみなかったのに、今はこうして鍋を囲んでいることがとても不思議だ。
匠の気遣いは完璧で優しくて、彼が隣にいることにいつの間にか緊張しなくなっており、みんなで笑いながら食卓を囲んでいると、これが本当の幸せなのだと錯覚するほどだった。
入籍の日取りもふたりで話し合い、あと一週間後の四月一日にしようと決めた。
秀夫と真弓の体調も順調に回復しており、新年度の始まりということと、エイプリルフールというのがふたりの遊び心だ。
これは嘘の結婚なのだと、自分に言い聞かせるにはちょうどいい皮肉だ。
入籍前に匠の両親に会っておきたかったが、匠は気が進まなそうだった。
匠の両親は離縁していて、匠は父親と暮らしていたがあまり仲良くはなく、父親は自立しているのだから好きにすればいいというスタンスだそうで、別れた母親はというと、異性関係の素行が悪く何度も浮気を繰り返し家族を困らせていたそうで、匠は思い出すだけで腹が立つからとくに必要ないと言った。
匠の女嫌いは母親の悪いイメージに加え、容姿だけで判断し寄ってくるこれまでの女性たちが原因らしい。