女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
うまくマッチングしたらしく、すぐに三十代くらいのメガネ姿の男性が合流した。
その男性は医者だと聞こえていたので、顔見知りだったら面倒なので、店を変えるかみえない位置に移動しようかと思っていたが、ぱっと見面識はない男だった。

秀夫がまだ入院しているのに男漁りなど、彼女には何をしているのかとがっかりしたが、誰がどこで何をしようと勝手だ。
それにしても表では純情そうに見えていたが裏ではこんな遊びをしていたとは。やはり女は信用できない。

匠は他人のふりをして飲んでいたが、途中から聞こえてきた内容に耳を疑った。

男は医師で外科医だと言うが、言っていることがデタラメだった。雪音もその違和感に気がついたようで顔を曇らせる。下心を出した男に迫られ泣きそうになっていて、思わず助け舟を出した。

――たったそれだけがきっかけで、まさか結婚することになるとは。

雪音の存在は都合が良かった。

初めこそ誤解をしたが、彼女はほんとうに男性に耐性がなく奥ゆかしい性格だった。
そこで、彼女と付き合っている風に装えば、ストレスから解放されるのではと思いつく。

(彼女は女避けになる)

匠に興味がない年頃の独身女性で、好きになったなど言われる心配がなく、そして恩師の娘となれば周りからも認められらやすい。
こんな好条件の女性、今後探しても見つからないだろう。 
 
仕事に集中したい中、次々と言い寄られるのは正直地獄だった。丁寧に断れば泣いて諦めないし、邪険に扱えば突然仕事を辞めてしまい、匠が病院から小言を言われる。
最悪なのが逆恨みで、有る事無い事言いふらす奴だ。知らない間に体の関係を持ったことになっており、女をもて遊ぶ酷い男に成り下がっている噂も聞いた。

(――うんざりだ)

精神を研ぎ澄まし命を守る仕事をしている職場で、そんな話ばかりでは堪らない。

多少強引ではあったが、雪音の事情もあり契約関係を結ぶことに成功した。
おかげで愛美との縁談もなくなり、その他からも頻繁に誘われることも減って予定どおりだ。

愛美はいまだに何を企んでいるのかたまに姿を現すが、そのうち諦めるだろう。
彼女の大切な時間をもらう代わりに、一緒にいる間は不便や嫌な思いはさせない。そしてこの関係が無駄にならないよう、雪音のリハビリの相手になろうと誓った。
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