女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
強めに言うと、シャキッとした返事が返ってきた。その瞬間、待ちきれなくなって重ねていた手を掴み引き寄せる。
雪音は微かな悲鳴をあげて腕の中にすっぽりとおさまった。
(華奢だな)
小さくて、そっと抱きしめるだけのはずがつい腕に力が入ってしまう。
緊張した息づかいと、バクバクとしている彼女の鼓動が聞こえてきた。
「気分は?」
「わ、悪くないです」
「本当か?」
「大丈夫。温かくていい匂いがします」
生真面目に実況され、緊張していた体の力が抜ける。でもまだ、匠の鼓動も早かった。
「はは、何だそれ」
「本当なんです。なんだか安心する匂い……あとは、今はよくわかりません。比喩じゃなく心臓が口から飛び出そうで」
「確かに心臓の音がすごい。聴診器で聞いてみたらどんな風に聞こえるんだろう」
「聞かないでくださいよ恥ずかしい」
匠を見上げる目は潤んでいる。言うことも仕草も、すべてが心を打った。
「気にするな。俺も緊張しているから。ほら」
自分の胸に頭をき引き寄せ埋めると、雪音は耳をすませた。
「ほんとですね。匠さんもドキドキしてる」
もっとよく聴こうとしているのか、頬をぐっと充ててきた。無邪気な頭を撫で、耳元で囁く。
「雪音、俺は君を大切にしたい」
「匠さん……」
匠が雪音に散々告げてきたことと言えば、女が嫌いで、仕事に集中したいから結婚するつもりはない。女よけのためにしばらく偽装結婚に協力してくれということだ。
――今更どうしたら取り消せるのだろう。
自分に興味のない女がいいと言ったくせに、自ら彼女を愛してしまうだなんて滑稽にも程がある。
今、急にやっぱり好きになったから偽装ではなく恋愛結婚にしようなどと言っても混乱させるだけだし、なんなら断られる可能性は十分にある。
それならば、リハビリと称して距離を詰めていくのが良さそうだ。
(キスは……やはり駄目だろうな)
欲望を抑え、かろうじて紳士な男を演じる。
「俺が、君を幸せにする」
「ありがとうございます……」
抱きしめながら何度も頭を撫でると、雪音の顔はとろんと蕩けた。
雪音は微かな悲鳴をあげて腕の中にすっぽりとおさまった。
(華奢だな)
小さくて、そっと抱きしめるだけのはずがつい腕に力が入ってしまう。
緊張した息づかいと、バクバクとしている彼女の鼓動が聞こえてきた。
「気分は?」
「わ、悪くないです」
「本当か?」
「大丈夫。温かくていい匂いがします」
生真面目に実況され、緊張していた体の力が抜ける。でもまだ、匠の鼓動も早かった。
「はは、何だそれ」
「本当なんです。なんだか安心する匂い……あとは、今はよくわかりません。比喩じゃなく心臓が口から飛び出そうで」
「確かに心臓の音がすごい。聴診器で聞いてみたらどんな風に聞こえるんだろう」
「聞かないでくださいよ恥ずかしい」
匠を見上げる目は潤んでいる。言うことも仕草も、すべてが心を打った。
「気にするな。俺も緊張しているから。ほら」
自分の胸に頭をき引き寄せ埋めると、雪音は耳をすませた。
「ほんとですね。匠さんもドキドキしてる」
もっとよく聴こうとしているのか、頬をぐっと充ててきた。無邪気な頭を撫で、耳元で囁く。
「雪音、俺は君を大切にしたい」
「匠さん……」
匠が雪音に散々告げてきたことと言えば、女が嫌いで、仕事に集中したいから結婚するつもりはない。女よけのためにしばらく偽装結婚に協力してくれということだ。
――今更どうしたら取り消せるのだろう。
自分に興味のない女がいいと言ったくせに、自ら彼女を愛してしまうだなんて滑稽にも程がある。
今、急にやっぱり好きになったから偽装ではなく恋愛結婚にしようなどと言っても混乱させるだけだし、なんなら断られる可能性は十分にある。
それならば、リハビリと称して距離を詰めていくのが良さそうだ。
(キスは……やはり駄目だろうな)
欲望を抑え、かろうじて紳士な男を演じる。
「俺が、君を幸せにする」
「ありがとうございます……」
抱きしめながら何度も頭を撫でると、雪音の顔はとろんと蕩けた。