女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
怖いって気持ちは、紙を丸めたみたいにくしゃくしゃと丸くなって、心の片隅に転がってるだけ。忘れはできないけど、少しずつ気にしないようにできるようになった。
匠のおかげでどんどん前へ進めていて、大袈裟かもしれないが世界が変わったように感じている。
(幸せ……)
何気なく思ったことに、自分でびっくりした。
(そっか。わたし匠さんと一緒にいれて幸せなんだ)
これが好きって気持ちなのかも。
その時とくんと胸が鳴り、心がそうだよと返事をしている気がした。
しかし、晴れやかな気持ちに直ぐに翳りがさす。
(好きになられるのは困ると言っていたのに……)
まさか自分があれほど恐れていた男性に好意が芽生え、彼の期待を裏切ることになるとは思ってもみなかったけれど……たくさん助けてくれる匠に迷惑をかけたくはない。少しでも恩返しできるようにこの関係を続けるには、好意は隠さないとだ。
食事を終えて区役所へ向かい、婚姻届を提出すると、手続きはあっという間に終わってしまった。
「もう、良原じゃなくて深沢なんだ……」
区役所をでても思ったよりも事務的であっけなく、なんの実感も湧かない。雪音が呟くと、匠は笑った。
「俺たちはもう夫婦だ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
どちらともなく握手をすると、そのまま手を繋いで歩き出した。
四月に入り気温が高くなってきたせいか、トレンチコートがいらないくらい、身体中がぽかぽかと温かかった。
「夕飯はレストランを予約したんだ。ふたりで記念日を祝おう」
「嬉しい。ありがとうございます」
街中で買い物や用事を済ませて夜になると、匠は車を郊外まで走らせた。
「あれ? ここ……」
着いたのは一軒家のレストランだ。石造りの瀟洒な邸宅で、広い敷地には庭園が広がっている。
入り口にある洋風の石垣には『ライムライト・ヴェール』と書かれたプレートがあった。ライムライトは新宿のバーと同じ名前だ。
「ここのオーナーはバーと一緒の人で以前から知り合いなんだ。以前から食べに来てくれと声をかけて貰っていたがなかなか来る機会がなかったんだが、いい機会だと思ってな。素材が新鮮で美味いと評判らしい」
「嬉しいです。たしか昨年の夏にオープンしたばかりですよね。沙友里とも来たいねって話をしていたんですけど、予約がなかなか取れなくて」
「沙友里さんは、バーで一緒に飲んでいた友人か」
匠のおかげでどんどん前へ進めていて、大袈裟かもしれないが世界が変わったように感じている。
(幸せ……)
何気なく思ったことに、自分でびっくりした。
(そっか。わたし匠さんと一緒にいれて幸せなんだ)
これが好きって気持ちなのかも。
その時とくんと胸が鳴り、心がそうだよと返事をしている気がした。
しかし、晴れやかな気持ちに直ぐに翳りがさす。
(好きになられるのは困ると言っていたのに……)
まさか自分があれほど恐れていた男性に好意が芽生え、彼の期待を裏切ることになるとは思ってもみなかったけれど……たくさん助けてくれる匠に迷惑をかけたくはない。少しでも恩返しできるようにこの関係を続けるには、好意は隠さないとだ。
食事を終えて区役所へ向かい、婚姻届を提出すると、手続きはあっという間に終わってしまった。
「もう、良原じゃなくて深沢なんだ……」
区役所をでても思ったよりも事務的であっけなく、なんの実感も湧かない。雪音が呟くと、匠は笑った。
「俺たちはもう夫婦だ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
どちらともなく握手をすると、そのまま手を繋いで歩き出した。
四月に入り気温が高くなってきたせいか、トレンチコートがいらないくらい、身体中がぽかぽかと温かかった。
「夕飯はレストランを予約したんだ。ふたりで記念日を祝おう」
「嬉しい。ありがとうございます」
街中で買い物や用事を済ませて夜になると、匠は車を郊外まで走らせた。
「あれ? ここ……」
着いたのは一軒家のレストランだ。石造りの瀟洒な邸宅で、広い敷地には庭園が広がっている。
入り口にある洋風の石垣には『ライムライト・ヴェール』と書かれたプレートがあった。ライムライトは新宿のバーと同じ名前だ。
「ここのオーナーはバーと一緒の人で以前から知り合いなんだ。以前から食べに来てくれと声をかけて貰っていたがなかなか来る機会がなかったんだが、いい機会だと思ってな。素材が新鮮で美味いと評判らしい」
「嬉しいです。たしか昨年の夏にオープンしたばかりですよね。沙友里とも来たいねって話をしていたんですけど、予約がなかなか取れなくて」
「沙友里さんは、バーで一緒に飲んでいた友人か」