女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
「ええ、沙友里はライムライトの店長さんのファンなんですよ。お料理もお酒も美味しいし雰囲気も好きで常連なんです」
沙友里とはバーでの出来事から会えていないが、匠とのことも報告しておきたいから、近々また誘ってみよう。

「へえ、俺も定期的に店に行ってたけど、雪音と会ったことなかったな」
「常連といっても、私は数ヶ月に一回程度ですよ」

重厚な観音開きの扉を開けると、格調高いクラシックな家具が並ぶラウンジがあった。

「いらっしゃいませ。オーナーの灰谷です。いつもライムライトをご贔屓くださりありがとうございます」
オーナー兼店長が出迎え、優雅に挨拶をした。

「こんばんは。先日はバーの方でお騒がせして申し訳ありませんでした」
雪音は慌てて頭を下げる。

高級すぎず気軽に飲める落ち着いたバーとして人気が高いのに、大声で騒ぐような客が居てさぞ迷惑だっただろう。

「いえ。何事もなくて良かったです。あの男は怪しいなと思っていたら案の定でしたね。いつ男に声をかけようか様子を伺っていたんですが、ベストタイミングで深沢さんが助けに入ってくださって」
あの時のことは思い出すだけで今でも怖いし反省している。

「皆さんに助けていただいて、本当にありがとうごさいました」
雪音がもう一度頭を下げようとすると、灰谷は手を軽くあげやんわりとそこ必要はないと伝えてきた。

「胸の痛い思いをしたかもしれませんが、そこからのドラマチックな出会いもある。今日はおふたりの記念日に、当店をお選びいただきありがとうございます。ぜひお祝いのお手伝いをさせてください」

個室への扉を開くと、ラウンジとはまた違う雰囲気だ。深紅の絨毯に、美しいシャンデリア。会話を邪魔しない程度に心地よいクラシックが流れている。

格子付きの窓の外は薔薇園となる。柔らかい光でライトアップされた、夜でも美しい庭園を眺めることが出来る。
テーブルの真ん中にはシャンデリア型の燭台が置かれ、蝋燭の火を模した灯りが揺らめいている。

向かい合わせに座ると、ノンアルコールのスパークリングで乾杯し、オマール海老を使った前菜に、アワビのシャンパン蒸し、ストロガノフ風の和牛。芸術的ともいえるコース料理を味わった。

ラストは苺のマカロンが添えられたデザートが運ばれてくる。

「わあ、可愛い」
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