女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
9
「良原さん……じゃなかった、深沢さん。指輪素敵だね」
翌週、休憩時間に同僚の川島に声をかけられた。
雪音の隣の席に座るとお弁当を広げる。
彼女はひとつ上の先輩で、たまに休憩を合わせてランチに行くような間柄だ。
週明けの月曜日に総務に引越や婚姻の事務手続きをお願いすると、水曜日には院内で働くほとんどの人が結婚を知っていた。
相手が匠だから一部の女性から騒がれるのは覚悟していたが、なぜか男性の医師や看護師からも結婚は本当かと何度も声をかけられることになり、その反響の凄さに驚いていた。
(まあ、"あの深沢先生が"とはなるかも)
不思議なのは声をかけてきたか男性たちが、肩を落として去っていったことだ。
聞いてきたのは独身の方ばかりだったから、女性嫌いと言われていた匠に先を越されたことが残念だったのかもしれない。
「ありがとうございます。これまであまり装飾品をしてこなかったので気恥ずかしいんですよね。あと病院では旧姓のまま続けるので、良原で大丈夫です」
「私もそのブランド憧れてるんだ。いいなぁ、さぞかし素敵なプロポーズだったんでしょうね」
「いえ、そんな……」
どう答えるのが正解なのか、迷ってしまい口籠る。
「ふふ、顔真っ赤だよ。あーあ、良原さんずーっと彼氏居なさそうだったのに突然結婚するから、狙ってた男性陣はがっかりしてるんだろうなあ」
川島はお弁当のおかずを頬張った。
「揶揄わないでくださいよ。私なんて相手にされたことないですから」
これまで飲み会の誘いだって全部断ってきたし、きっと付き合いの悪い人だと思われているのではないか。
「結婚式はするの?」
「はい。何も決まってないんですけど、もう少し落ち着いてからやろうかって話はしていて」
「ひゃー! あの深沢先生がそんな甘々な話をしているなんて信じられない!」
川島は急に大きな声を出して悶えた。
「ねえ、家だとどんな感じなの? 普段は冷たい雰囲気だけどさ、自分だけに特別優しいって嬉しいよねー」
特別かはわからないが、匠に笑いかけられると胸の奥がきゅっと締め付けられるし、触れられるとあったかくて心が蕩けるようになる。
「とても優しいですよ。時間があれば料理も一緒にしてくれたり、買い物に付き合ってくれたりしますし」
「深沢先生が料理! 包丁捌きとかすごくて芸術的な料理つくりそう」
やっぱりそう思うよね、と笑いが込み上げた。
執刀の技術は素晴らしいと評判なのに、料理となるとその器用さは途端に発揮されなくなるのだから。
「なんだか良原さんって雰囲気が柔らかくなったよね」
「そう、ですか?」
自分ではよくわからない。
翌週、休憩時間に同僚の川島に声をかけられた。
雪音の隣の席に座るとお弁当を広げる。
彼女はひとつ上の先輩で、たまに休憩を合わせてランチに行くような間柄だ。
週明けの月曜日に総務に引越や婚姻の事務手続きをお願いすると、水曜日には院内で働くほとんどの人が結婚を知っていた。
相手が匠だから一部の女性から騒がれるのは覚悟していたが、なぜか男性の医師や看護師からも結婚は本当かと何度も声をかけられることになり、その反響の凄さに驚いていた。
(まあ、"あの深沢先生が"とはなるかも)
不思議なのは声をかけてきたか男性たちが、肩を落として去っていったことだ。
聞いてきたのは独身の方ばかりだったから、女性嫌いと言われていた匠に先を越されたことが残念だったのかもしれない。
「ありがとうございます。これまであまり装飾品をしてこなかったので気恥ずかしいんですよね。あと病院では旧姓のまま続けるので、良原で大丈夫です」
「私もそのブランド憧れてるんだ。いいなぁ、さぞかし素敵なプロポーズだったんでしょうね」
「いえ、そんな……」
どう答えるのが正解なのか、迷ってしまい口籠る。
「ふふ、顔真っ赤だよ。あーあ、良原さんずーっと彼氏居なさそうだったのに突然結婚するから、狙ってた男性陣はがっかりしてるんだろうなあ」
川島はお弁当のおかずを頬張った。
「揶揄わないでくださいよ。私なんて相手にされたことないですから」
これまで飲み会の誘いだって全部断ってきたし、きっと付き合いの悪い人だと思われているのではないか。
「結婚式はするの?」
「はい。何も決まってないんですけど、もう少し落ち着いてからやろうかって話はしていて」
「ひゃー! あの深沢先生がそんな甘々な話をしているなんて信じられない!」
川島は急に大きな声を出して悶えた。
「ねえ、家だとどんな感じなの? 普段は冷たい雰囲気だけどさ、自分だけに特別優しいって嬉しいよねー」
特別かはわからないが、匠に笑いかけられると胸の奥がきゅっと締め付けられるし、触れられるとあったかくて心が蕩けるようになる。
「とても優しいですよ。時間があれば料理も一緒にしてくれたり、買い物に付き合ってくれたりしますし」
「深沢先生が料理! 包丁捌きとかすごくて芸術的な料理つくりそう」
やっぱりそう思うよね、と笑いが込み上げた。
執刀の技術は素晴らしいと評判なのに、料理となるとその器用さは途端に発揮されなくなるのだから。
「なんだか良原さんって雰囲気が柔らかくなったよね」
「そう、ですか?」
自分ではよくわからない。