女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
「うん。いつも穏やかだったけどね、どこか緊張感があったというか……うーん、上手く言えないや。とにかく、今は幸せが滲み出てて以前に増して可愛いく見えるってこと!」

変わったように見えるのだとしたら、匠のおかげだ。

一緒に過ごす時間が増えるほど、匠の存在が雪音の中で大きくなっていくのを感じている。仕事中に関しては、常に気を張っていることがなくなって、以前より驚いて怯えたりすることが減ったように感じる。

――それと、匠との関係もまた少し進歩があった。
正式に夫婦になった日から、キスをするようになった。

これは思い出すだけで胸が弾けそうなほど暴れ出し、まったく慣れる様子はないけれど、匠は頭を撫でる行為や手を繋ぐこととも適応できたように、キスも毎日続ければきっと慣れると、朝も夜も誘うようになった。

初めてのキスをぼんやりと思い出す。
食事を終えて帰ると、匠は正式な夫婦になったのだから、これからはキスをしたいと提案してきた。

緊張して体を硬くする雪音に、匠は優しく触れるだけのキスを何度かした。
ふわりと触れる唇は柔らかくて、一度してしまえば緊張よりも気持ちよさが勝った。気持ちが通じ合うってこう言うことなんだと、幸せな気持ちで満たされた。

「……変わりたかったので嬉しいです。ありがとうございます」
匠のことを考えるだけで胸が暖かくなって、自然と顔が綻ぶ。素直にお礼を伝えると川島はどうしてか顔を赤くしていた。

「そういえば今日って、雑誌の取材があったよね? これまで絶対依頼を受けなかった深沢先生がインタビューとか」
「そうなんです。もう少ししたらライターさんが来るはずで」
午後は沙友里の出版会社からの依頼で取材のお仕事だ。

といっても、雪音は仲介者として同席するだけで、お茶出しくらいの仕事しかない。
ことの始まりは近況報告を沙友里にしようと、連絡をしたところからだ。

伝え方を間違えたのか、【この間はありがとう。色々あって、病院の先生と結婚しました。話したいのでどこかで会う時間ある?】とメッセージ送るとすぐに電話がかかってきて根掘り葉掘り聞かれ、もっと早く報告してほしかったと嘆かれ、お詫びに匠のインタビューという仕事をとってきてほしいと頼まれた。
< 59 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop