女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
匠は食事を取ろうとしてたらしく、雪音が作った弁当を広げている。
こちらに気がつくと立ち上がり会釈をした。

「こんにちは、カレイド出版の佐藤と篠田、こちらはフォトグラファーの影山です。本日はお忙しい中、インタビューにご協力いただき、誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします」
沙友里が名刺を渡しながら元気に挨拶をした。

「よろしくお願いします」
匠は三人と名刺交換をするとソファに座る。

「ご昼食がこれからなら、少し時間ずらしましょうか?」
佐藤が申し訳なさそうにする。

「実はこれ昨日の夕食分なんです。チャンスを逃すと昼はもとよりインタビューどころじゃなくなるから、今のうちにお願いできれば。写真が後ならインタビューは食べながらでいいですか? 急いで食べてしまいますので」

匠の弁当は、昨日の夜勤用に雪音が作ったものだ。ということは、昨夜も今朝も食事を取り損ねてしまっているらしい。
この様子では、仮眠時間もほぼなかったのではないか。

相変わらずの忙しさに匠の体が心配になる。雪音にできるのは弁当の用意くらいで。少しでも疲れが取れるように胃に負担がないものや疲労回復レシピにこだわっておかずを用意している。

「もちろんです! なるべく早く終わらせるようにいたしますね。お弁当は奥様の手作りですか? 羨ましいです」
佐藤は匠のあい向かいに座ると、鞄からパソコンとレコーダーを取り出しテーブルに並べた。

「ええ、これが本当に美味いんです。消化のいいものだったり、食べやすく工夫されていて愛情が伝わりますね」
匠がそんな風にのろけを言うとは思わず、雪音は耳まで真っ赤にする。

「あら素敵! 食べているところのオフショットも撮っていいですか? 奥様もぜひご一緒に」
沙友里が少しはしゃいで言うのと同時に、影山がカメラの準備ができたようでパシャパシャとシャッター音を響かせる。

「これはテストショットです。掲載されませんので御安心ください。よかったらご夫婦で何枚か撮りましょうか。データお送りしますよ」

ありがたい話だが、みんなに注目されながら撮られるのは雪音は遠慮したい。

「い、いえいえ、お気持ちだけで十分ですので……お時間が限られているようですから、ぜひ進めてください」
いたたまれなくなり、隣の給湯室に逃げるように入った。
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