女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
それが子豚の丸焼きだとわかり、驚いて目を丸くする雪音に、匠は説明をしてくれる。

「バリの伝統料理なんだ。香辛料で味付けをして焼いてある。見た目は可哀想なんだが……以前食べた時に美味かったからまた食べたくて」
「ほんと……いい匂い」
香ばしい香りが食欲をそそる。

「スキンがパリパリなのに、中の肉はジューシーで柔らかい。このサンバルという、辛味ソースをつけて食べる」
シェフが切り分けてくれると、ノンアルコールのビールで乾杯をした。

「ワインとか頼まなくていいの?」
話し合い、避妊をしないと決めてからはアルコールも控えており、匠も一緒にお酒を絶ってくれている。
「こんな時くらい、飲んでくれて大丈夫だよ」
せっかくなのだから、匠には存分に楽しんでもらいたい。

「雪音が一緒ならアルコールがなくても景色も料理も極上だよ」
到着までにみた景色や、明日は何をしようかと会話に花を咲かせながら料理を味わった。

緊張か疲れからか、挙式前日からあまり食べることができなかったが、今日はパクパク胃に入る。お腹いっぱいになると、ふたりで庭に面した開放的なお風呂に入ることに。

室内なのだが、露天風呂のように壁と天井がなく、もしプライベートガーデンに誰か入ってきたら丸見えだ。
これまで一緒に入ったことは何度もあったし、バスルームの照明は暖色で薄暗いので互いの体はぼんやりとしか見えないが、何度経験しても慣れずに恥ずかしい。

「早くおいで」
ゆっくり準備をしていると、先にバスタブに浸かった匠が手まねきをした。
足の先からそろそろた沈むと、すぐに後ろから抱きしめられふたりは密着する。

「はぁ、気持ちいいな」
昼間は日本の夏のように蒸し暑いようだが、夜は二十度程で過ごしやすい。

匠が空を仰いだので雪音も視線を上げると、天の川と見まごうほどの美しい星空だった。
浸かっていると、温かいお湯と匠の腕の気持ちよさに眠気が襲ってくる。

「このまま寝れそう」
お湯は熱くもないのにすぐにぼーっとしてきた。

「のぼせる前に出よう」
匠はそう言うと雪音を抱き湯から上がった。

「た、匠さん、自分で歩けるからっ」
すぐにバスローブをかけてくれたとはいえ、裸で抱き上げられるなどどうしたものか。

「暴れない。転ぶと危ないだろ。王子の言うことは素直に聞くものだよお姫様」
「あ、ここでお姫様呼びはずるい」
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