女嫌いな心臓外科医の契約妻になりました
エピローグ
「巧真、匡人! 大変、幼稚園のお迎え来ちゃうよ。お着替えがんばろう」
雪音はふたり分のカバンと水筒を用意すると、子どもたちを急がせた。

巧真は年長でなんでも器用にこなせるようになってきて、スモックを羽織り準備万端だ。匡人は年少のためまだまだ手助けが必要で、靴下を履こうと頑張っているようで、集中して唇が尖がっている。
癇癪を起こさず黙々と練習をする姿は親として誇らしかった。

(可愛い……)

思わず見入ってしまったが、はっと時間がないことを思い出す。

「ただいま。よかった今日は間に合ったな」
ちょうど匠が帰宅し、リビングに現れた。

「お帰りなさい」
「あっ、パパ!」
「パパだー!」

タイミングが合わず子供たちは顔を見るのは三日ぶりだ。
足にしがみついた巧真が抱きあげてもらうと、匡人も履き途中だった靴下を放り投げて駆け寄った。

「たっくんずるい! ぼくもー!」
「あ、匡人。靴下履かなくちゃ」
雪音は靴下を拾うと追いかけた。

「匡人、偉いなぁ靴下ひとりで履けたのか?」
匠はふたり同時に抱き、片方だけ履けたことを褒めた。

「えへへ。むつかしいのできたよ!」
「すごいぞ。じゃあ、もう片方もできるな?」
「うん!」

匡人は自慢げに返事をすると、また靴下に挑戦し始めた。

「ぼくはー? ぼくもすごい?」
巧眞が褒めて欲しくて目をきらきらとさせる。
「もちろんだ。巧眞も自分で準備できて偉いな」
「えへへー。ママねー、おなかおっきくて大変だから、ぼくがんばるの!」

匠に褒められるとくすぐったそうな顔をした。

「ありがとう。ママもパパも助かるよ」
ハネムーンで妊娠が発覚してから七年、なんと三人目を妊娠中だ。

今は臨月で、今度はなんと女の子だ。男の子が続いていたので、匠はスポーツチームを作るのもいいなだなんて想像して楽しんでいたが、女の子とわかるとベビー用品をすべて女の子用で買い揃えるほど張り切っていた。

生まれたらきっとメロメロになるに違いない。
息子は匠に因んだ名前にしたが、女の子は雪音のように季節を取り入れた名前にしたいと匠はここのところ毎日のように悩んでいる。
そんな姿を見るたびに、胸の奥がふわりと温かくなる。

季節が巡る旅に家族の形がかわり、新しい笑い声が生まれている。そんな日々が幸せで、愛おしかった。

お腹を撫でると、ぽこんと蹴り返された。『もうすぐ会えるよ』――そう言われた気がした。


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