あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~
「これからお仕事ですよね。お時間を取らせてすみません」
「いや、それはいいんだけど、安斉は……?」
「今日は有給休暇を取りました」
「そうか。それがいい。家でゆっくり休んで」

 私の左手に視線を注いだ彼が、痛々しいと言わんばかりの顔をした。
 一夜明けて、まだ痛みは残っているけれど、しばらくしたら治るケガだから心配いらないのに。

「須南先輩、今度お礼をさせてください」

 さすがにこのまま『さよなら』とだけ言って別れるのは、自己中心的すぎるだろう。
 こんなにお世話になったのだから、せめてものお礼をしないとダメだ。

「礼なんていいよ」
「でも……」
「じゃあ、食事に行かないか?」
 
 思いもよらない言葉が聞こえてきて、一瞬ポカンとしてしまった。
 憧れの先輩で、初恋相手でもある須南先輩と食事に行くなんて、夢でも見ているのかと疑いたくなってくる。

「ごめん、嫌だった?」
「と、とんでもないです! 嫌なわけないですよ」

 ふるふると首を横に振ると、彼は照れたように笑って「よかった」とつぶやいた。
 自然に胸がドキドキと鼓動を速める。その綺麗な笑顔は世の女性たちを虜にするから反則ですよ、と抗議したいくらいだ。

 メッセージアプリで連絡先を交換したあと、仕事へ向かう彼の背中を見送った。
 スラリと背が高く、見惚れるくらいスタイルがいい。
 だけどそれだけでなく、私にとっては誰よりも頼りになる、たくましい背中だった。
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