あの日を越えて、二度目の初恋を~最愛の彼との再会愛~
「で、カフェを出たら今度はひったくりに遭ったの? 泣きっ面に蜂じゃない」
「本当にそう」
「犯人の男、許せない! ねぇ、ケガは大丈夫?」
「うん。でも動かすと痛いから、しばらくは不便かな」

 捻挫をした左手は利き手ではなかったものの、なるべく使わないようにしようとすると、日常生活に支障が出る。治るまでは仕方ないのだけれど。

「なんですぐ私に電話してこなかったのよ」

 董子が不満そうに唇を尖らせつつ、いなり寿司に箸を伸ばした。
 一年前、父が転勤になって母とともに福岡へ行ってしまったため、現在は家族が近くにいない。
 彼女はそんな私の事情を知っているからこそ心配してくれているのだ。

「だって、仕事中だったでしょ?」
「そうだけど……」

 董子はスポーツクラブでインストラクターの仕事に就いている。
 意識高い系の彼女は人気があるため、土日が休みの私と違って忙しいのだ。
 それなのに急に呼び出すなんてできなくて、昨日は結局連絡しないままだった。

「ひとりで大変だったね。警察も呼ばなきゃだし」
「えっと……ひとりじゃなかったの。助けてくれた人がいて」

 董子がいなり寿司を咀嚼しながら、話の先を促すように首をかしげた。
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