チョコレートフォンデュ
交差する疑惑
残りのパスタを食べ終え、豊も二杯目のコーヒーを飲み終えそうな時、店の入り口から、さっきの案内人の女の子が、同じ台詞を繰り返していた。

「お客様何名様ですか?」

私の座っている位置から入り口は、他人同士が人目を気にせず食事をできる様に考えられたであろう少し高めの囲いに、その上に置かれたいかにも偽者の植物達が邪魔をしており、見えなかった。豊の位置からはもちろん、入り口の方を背にして座っている状態なので、入ってきた人を見ることはできなかった。

私もコーヒー一杯飲んでいい?と豊に聞き、彼の首が縦に動いたのを確認すると、私は他のお客さんの接待をしていたさっきの女の子がこっちに気づくように軽く右手をあげた。


と、その瞬間、案内人の新人の子が、若い女の子と、かなり年配のおじさんカップルを私達の席とは間逆に位置する所へ連れて行ったのが見えた。


その女の子が誰だか認識するまでに要した時間は、二秒足らずだったろう。


「今の・・・」


と言いかけた瞬間、さっきまで別テーブルにいたウェイトレスの子が、

「お客様ご注文ですか?」


万遍の笑みで聞いてきた。





コーヒーはすぐに運ばれて来た。角砂糖を二つ入れ、小さいスプーンを使って機械的に手首を動かしながら豊に聞いてみた。


「この店、りぃと来たことある?」


「なんで?ないよ?そんな危ないことしないよ」


当たり前である。

豊のこうゆうずる賢い感じも、たまに鼻につくんだと、思った。

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