世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 もし私に踏み込もうとしているのだとしたら、私も少しだけ歩み寄るべきなんじゃないかと、ためらいながら唇を開いた。



 美術館を出てセーヌ川沿いを歩いていると、香ばしい匂いが漂ってきた。

 視線を向けると、古びた屋台の主が大きな鉄板で栗を焼いている。

「……あ」

 足を止め、吸い寄せられるように屋台を覗き込む。

 蓮司さんは眉を寄せ、理解できないというようにつぶやいた。

「気になるのか?」

「あ、いえ。全然……」

 咄嗟に首を左右に振るが、最悪のタイミングでお腹が鳴った。

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