世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 これも焼き栗の甘い香りのせいだ。

「ここにご両親はいないぞ」

 そう言うと、蓮司さんは私が止める間もなく焼き栗を購入する。

 そして無造作に新聞紙を丸めただけのような袋に入ったそれを、私に手渡した。

 指先に伝わる驚くほどの熱は、なぜか蓮司さんと手を繋いだ時のことを思い起こさせる。

「ありがとうございます」

 ふい、と蓮司さんは目を逸らした。

 別に礼を言われるようなことではないと思っているに違いない。

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