世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 その認識は間違いなのだと伝えたかったけれど、ちょっと例えが悪かっただろうか。

「数ユーロだろうとおいしいものはおいし――」

「意外とかわいらしい反応をするんだな」

 彼が低く、ふっと息をこぼした。

 それは出会ってから初めて目にする、嘲笑ではない微かな笑みだった。

 気づいた瞬間、胸がどきりと音を立てる。

「今……え?」

「冷めるぞ」

「あっ……は、はい。蓮司さんも食べますか?」

「俺はいい」

 たぶん、聞き間違いだ。

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