世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 あの時のことなら覚えている。

 私の愛想笑いをいいように解釈した、年配の男性だ。どこかの企業の重役だったと言っていた気はするけれど、彼の言動ばかり焼きついてしまったからか、頭から抜けていた。

「誘ってるんだろうって。私はただ、あの場にふさわしい振る舞いを心掛けていただけです。笑顔で話すのもそうでした。なのに……」

 蓮司さんはじっと私を見つめたまま、なにも言わずに視線だけで話を促す。

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