世界一嫌いな男に妻として買われたら、容赦ない溺愛で堕とされました
 両親に決められた門限を過ぎているどころか、もう寝る時間だというのに。

 無意識に手が震え始めた。

 頭ではわかっている。私はもう九条の人間ではなく、霧島蓮司という男の妻だ。

 だから両親の言いつけに従う必要はないのに、長年刻まれた呪縛のせいで目の前が真っ黒に塗り潰されていく。

 あんなに美しかった夜景も、言葉にできない不安のせいで色を失くし始めた時――。

「大丈夫か?」

 声をかけられた瞬間、ふっと身体に温度が戻ってきた。

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