買われた花嫁
 近づいてきた指先が私の輪郭をなぞるように滑り、流れるように顎を持ち上げた。

 あ、と声をあげる間もなく口づけを落とされ――それだけでなく、唇の端を舐められた。

「なっ……なに、して……っ」

 場所が場所だけに極限まで声をひそめて抗議する。

 けれど蓮司さんは気にした様子なく、口角を引き上げた。

「たしかに香りがいい。甘さも好みだ」

「食べるなら自分のものを食べてください」

「君も、俺のものだろう」

 顎から唇へと伝った指が、私を煽るように動く。

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